明大中野八王子vs攻玉社
先発の坪井(明大中野八王子)
本物の投手へ、成長を感じさせる5回完封勝利
まだ名は上がっていないが、今後、東京都で話題になる投手がいる。
その名は明大中野八王子の坪井 将希である。
坪井は昨年、背番号7でプレー。都立日野戦ではリリーフとして最速143キロを計測した速球派右腕だ。当時は野手を兼ねながらの出場だったので、技術的にも荒削りだったが、一冬超えて大分投手らしくなった。
まず投球フォームである。昨夏は踏み出す左ひざが開いて、それによって左肩の開きも早いフォームだった。投球はストレートが中心で、変化球はあまり使わない投球。『投手』へ成長するには長い期間を置く必要があった。坪井自身、投手らしさがなかったことを自覚をしていた。
「昨夏、自分は[stadium]神宮[/stadium]で投げたんですけど、速球だけで、変化球を満足に投げることが出来なかった。秋負けて、緩急が必要なんだと思って冬の練習に取り組んできました」
左肩の開きが押さえられ、お尻から先行する体重移動ができており、内回りの旋回をしていきながらトップを作り、打者寄りのリリースで指先に力が伝わったストレートを投げ込む。速球の勢いはこの日同じ球場で投げていた鈴木 優(都立雪谷)と比べても遜色がない。むしろ今日に限っては坪井の方が良かった。
試合は、明大中野八王子打線が初回から爆発。1回裏には無死満塁から4番坪井の押し出し死球で先制し、5番星野の走者一掃の三塁打で一挙4点を先制。なおも攻撃は続き、打者11人の猛攻で、7点を先制。2回裏には6番相澤の2点本塁打など5点を入れて、2回を終わって12対0のリード。試合を大きく決めた。その後も追加点を入れて、17対0のまま5回表へ。
強肩を披露していた渡辺(攻玉社)
そして坪井が、最後の打者を二ゴロに抑え、試合終了。
5回を投げて、被安打2奪三振6の完封だ。相手の力もあるとはいえ、昨夏からの成長を感じられる投球だった。
冬の間は、投球の幅、制球力、投球フォームの改善に努め、140キロ台の速球をより速くするために、短距離のダッシュ、股関節周りのトレーニングなどを中心に取り組んできたという。
本人も「2月から3月まで雪、試験、修学旅行で、殆ど投球出来ていない中でも、自分が目指す投球はできていた」と語った。
特に縦に落ちるカーブの切れは絶品で、攻玉社の打線は全くタイミングが取ることができていなかった。
このカーブを磨いたことで、投球に緩急が生まれた。またそういう投球をしないと、打力が高いチームを抑えることができないと身をもって実感しているからだろう。
非常にバランスが良く、まとまった投球であった。
チームも14安打を放って、17得点。難しい初戦をしっかりと打って結果を残したことで波に乗っていけるのではないだろうか。投手力、打撃力、守備力と非常に高いレベルにあり、春、夏では上位進出候補として注目を大きく浴びるチームになっていきそうだ。
(文=河嶋宗一)