大阪桐蔭vs常総学院
【内田靖人（常総学院）】
両主砲の競演！森友の決勝本塁打で大阪桐蔭が接戦を制する！
両主砲の本塁打攻勢にまるで別次元の戦いを見ているようだった。
試合が動いたのは3回表、大阪桐蔭は7番福森 大翔（3年）はストレートを右中間を破る三塁打を放ち、無死三塁のチャンス。8番水谷 友生也（3年）は直球を捉えて左横線へ落ちる適時打を放ち、1点を先制。葛川 知哉(3年）は凡退し、1番峯本 匠（2年）は左横線二塁打。一死二、三塁となって、2番高木 俊希（3年）は直球を捉えて中前適時打で3対0。
3点を先制して、3番森 友哉（3年）。高木が盗塁を決め一死二塁。二塁になれば、無理に勝負する必要はない。もちろん森友は歩かして、一死一、二塁。4番近田 拓矢（3年）は四球で一死満塁。5番香月 一也（2年）は右前安打で、4対0。いきなり4点を先制したかと思えば、常総学院も反撃に名乗り出る。
3回裏、常総学院は二死一、三塁のチャンスを作る。3番吉沢 岳志（3年）は直球を捉え、中超え二塁打。二者生還し、4対2の2点差に迫る。4番内田 靖人（3年）が直球を捉え、場外へ消える特大2ランで、4対4の同点に追いつく。内田は会心の当たり。森友のリードを読んでいたという。
「18Uから森は直球中心の配球で、第1打席でもすべてストレートしか投げてこなかったので、直球1本で待ちました」
第1打席の内田は高く上がりすぎた左飛。本人としては長打が打てる兆候があったという。そしてこの打席は本人にとっては打球が上がりすぎたと思ったが、打球はどんどん伸びて、場外に消えた。打球の角度、伸び、打球の速さの3項目が高校生としてはずば抜けている。内田の本塁打に、八王子に詰めかけていたファンがどっと沸いた。その中で、内田の本塁打に森友が心の中で闘志を燃やしていた。
「俺もやらなあかん」
甲子園が終わり、それまで忘れかけていた負けず嫌いな気持ちを取り戻した。
【勝ち越し本塁打を打った森友哉（大阪桐蔭）】
常総学院は4回裏に飯田 晴海（3年）の勝ち越し適時二塁打で5対4へ。5回表、大阪桐蔭は一死二塁となって、森にまわってきた。森は外角直球をうまくおっつけて左中間へ伸び、フェンス直撃の二塁打で同点に追いつく。打たれたら打ち返す。ただ本人は
「感覚がやや鈍っていました」
と不満顔。全盛期の感覚で打てていれば、左中間へ本塁打を打てていたいわんばかりのコメントである。実際にそれができる技術、パワーを持った選手だからこそ説得力がある。少しずつ森はスイッチが入っていた。
試合は常総学院の飯田、大阪桐蔭は5回からリリーフの左腕・網本 光佑（3年）の好投で、5対5のまま9回へ。この試合の流れを落ち着かせたのは網本の好投。森は前半の打線の勢いを見て、速球、変化球をコーナーに散らせたリードを展開。しかしそれもリード通りにボールが投げられて成立するものである。この日の網本は135キロ前後の速球、120キロ前後の高速スライダー、スクリュー、チェンジアップを織り交ぜ、常総学院打線を封じる。
「リードする側として楽でした」
と振り返るほど網本の安定感のある投球で、試合は5対5のまま9回へ。
延長戦に入るとタイブレークで決めなければならないが、タイブレークも頭によぎったこの試合。9回表、一死から2番高木が遊撃内野安打で出塁。一死一塁で森友に打席がまわった。直球だった。捉えた打球はライトスタンドへ飛び込む勝ち越し2ラン！森は笑顔を見せながらダイヤモンドを回る。
「完璧でした」
と本人も満足の本塁打で大阪桐蔭が勝ち越しに成功する。そしてその裏、網本が締めて大阪桐蔭が2回戦進出を決めた。
勝ち越したい場面で、打席が回り、そして勝ち越しホームランを打つ。誰も期待する場面で、期待通りの結果を残すのを見ると、彼こそスター性のある選手ということなのだろう。勝利した大阪桐蔭は常葉菊川と富山第一との勝者と対戦。甲子園を終え、忘れかけていた勝負に対する熱い気持ちを取り戻した森友はラストの高校野球生活で更なる大暴れを見せてくれそうだ。
（文＝河嶋宗一）
