佼成学園vs東亜学園
いきなりの強豪対決、佼成学園が4安打完封で制す
先発した小林君(東亜学園)
一次予選のブロック大会1回戦で当たるにはあまりにももったいないカードというのが正直なところだ。会場校となっている各校にとって、非会場校の強豪が来て欲しくないというのは共通の思いであろうが、そんな一つとして毎年、どこのゾーンに入ってくるのか注目される東亜学園。この秋は、昨夏の西東京大会準優勝校の佼成学園のブロックに入って、しかも1回戦で当たることになった。会場校として迎え撃つことになった佼成学園藤田直毅監督もこれには、「いきなりは勘弁してほしい相手ですよね」というのが本音である。
佼成学園は背番号11の安齋君、東亜学園は背番号15の小林君が先発となったが、これはどちらも奇をてらったとか、そういうのではなく現段階では一番調子のいい投手を先発させたということである。
安齋君は制球力がよく、ことに左右の出し入れというか、微妙なコースをつきながの投球だが、1回、2回と先頭打者に安打されてやや苦しい立ち上りだった。小林君は左腕の軟投派で、左腕独特のカーブが有効で、かわしながら相手に引っかけさせていく。2回は二つの失策もあって、ピンチを迎えたが何とか抑えていた。
両チームの状況からしても、先制点がモノを言う展開になっていくだろうと思われたが、佼成学園は3回、1死から2番野元君がライトへ会心の本塁打を放って先制。さらに、3回にも先頭の6番森口君が中前打で出ると、バントと暴投で三塁へ進み、2死後9番市堰(いちせき)君の左前打で2点目が入った。これで、安齋君もだいぶ楽になったのか、投球にもリズムが出てきて、試合は佼成学園ペースで進んでいった。
6回にも佼成学園は、やや疲れが出てきて持ち前の制球にいくらかブレが生じてきた小林君から3四球を選んで満塁としたところで、1番宮本君が中前打し3点目。試合の展開からしても、大きな得点となった。
注目の4番北君(佼成学園)
何とか、反撃したい東亜学園だったが、3回以降はなかなか得点機を作るような形になれず、安齋君のペースにハマっていった。6回に2番沼田君がバント安打するなど、工夫も見られたものの、7、8回の代打攻勢も実らなかった。
逆に9回、佼成学園は二つの四球から2死二三塁というチャンスを作ると、ここで森口君が一二塁間を破って2者を返した。森口君はこの試合では3安打と気を吐いた。夏休みの最終調整の関西遠征では履正社、大商大堺、大体大浪商などと試合をしてきたという佼成学園だが、そこではもう一つ調子が上がらなかったという森口君と、野元君がこの試合では大活躍ということで、藤田監督としても嬉しい誤算だったようだ。
佼成学園にとっては、結果的には快勝という形になった試合だった。この夏は、思わぬ形で大敗してしまっていただけに、新チームのスタートも慎重だった藤田監督だが、「夏の負け方は考えさせられました。1イニングで7失点して、エラーが相次ぐというパターンは、やはり心理的なものだったと思います。今日は、とにかく、持っている力を発揮しようということを言いました。まだまだ、発揮できなかった者もいましたが、オープン戦で苦しんでいた選手たちが結果を残したことは大きいですね」と、素直に喜んだ。
注目の4番北君は、この日は4打数1安打だったが、3回に放った左翼線の二塁打は、さすがと思わせる鋭い打球だった。選手個々は、持てる力を発揮していこうという姿勢は強く表れていた。
スコア的には完敗は否めない東亜学園の上田滋監督は、「1回と2回がすべてですね。1年生の多いチームでもあるし、先にリードしてそれで逃げて行きながら、主導権を取っていくという形を作らないといけないのに…、そのチャンスがあったんですけれどもねぇ。マズイ展開だなぁと思っていたんですが、その通りになってしまいました」と、いささか悔いの残る試合になってしまったようだ。そして、「東亜学園史上、もっとも早い秋の終わりになりました」と、苦笑しながら言い残してグラウンドを後にした姿は、いささか肩が落ちていた。
(文=手束仁)