明徳義塾vs大阪桐蔭
明徳義塾・守備ミスの差で大阪桐蔭の2連覇阻む!
突っ込んでのファインプレーで一気に流れを引き寄せるか。それともステイして安打に留めるのか。
明徳義塾中堅手・矢野優生(3年)にとっては難しい判断だった。彼の選んだのは前者。が、大阪桐蔭1番・峯本匠左翼手(2年)のライナーは矢野が差し出すグラブの先を抜け、バックスクリーン前の外野芝生へ転々。一気に峯本はダイヤモンドを一周し、大会第30号の先制ランニングホームラン。
大阪桐蔭にとっては最高の、明徳義塾にとっては最悪の展開で試合は始まった。
が、昨年準決勝のリベンジを期す明徳義塾の野心はそれでも全く折れなかった。
続く追加点のピンチを切り抜けると、2回裏・一死二、三塁から三塁封殺を狙った森友哉(3年)の送球が高投となり同点に。さらに二死一、三塁から9番・岩見昴遊撃手(3年)が大阪桐蔭・葛川知哉(3年)の真ん中高めストレートを流し打ちライト後方へ運ぶ勝ち越し2点三塁打。
高知大会では14打数ノーヒットながら、6月29日(土)の練習試合では済美・安樂智大(2年)から同方向三塁打含む3安打を放つなど、163センチの小兵でも速いストレート打ちには滅法強い彼の持ち味が存分に発揮された一打だ。
その一方。ここで記しておきたいのは大阪桐蔭の非力と一見思われる選手・ないしはデータのない打者に対する浅すぎる外野守備位置である。一例をあげれば昨年6月17日に[stadium]高知県立春野運動公園野球場[/stadium]で開催された高知県高野連特別招待試合の初回である。
ここでは全くデータのなかった1年生・岸潤一郎に対し、レフトは浅い守備位置で対応。結果、藤浪晋太郎(当時3年・現:阪神)のストレートをレフト定位置まで運んだ岸の打球は、レフトオーバーの先制二塁打となり、大阪桐蔭は2012年夏までに練習試合含め唯一の一敗を同地で喫している。
かくして逆転を許した3回裏。大阪桐蔭の過ちは繰り返された。二死球で得た一死一・二塁から明徳義塾5番・西岡貴成一塁手(3年)がレフトに上げたフライは風に流され、グラブの先をかすめる2点二塁打に。浜風・急に変わる風向に備え「後ろから入る」が甲子園外野手守備の鉄則。それに反するプレーを見せたことで、勝利の女神は完全に明徳義塾の味方に付いたのである。
その後は、岸潤一郎(2年)がストレート・変化球共に絶品の切れ味を見せて2回以降無失点。内外野も守備ポジショニングで長打を安打に、安打を凡打に変えた彼らは見事自高野球道場で3対9と完敗した6月16日(日)練習試合のリベンジを達成し2年連続4度目のベスト8進出。
それは同時に岸、宋皞均右翼手(3年)、逸﨑友誠三塁手(3年・主将)、西岡ら5名がベンチやグラウンドで経験した昨年準決勝の悔しさを晴らした瞬間でもあった。
(文=寺下友徳)