試合レポート

浦和学院vs川越東

2013.07.28

初球で決まった決勝戦

 王者・浦和学院対勢いのある川越東という埼玉県でこれまでになかった顔ぶれとなった決勝戦、浦和学院小島和哉(2年)、川越東高橋尚貴(2年)と両エースの先発で始まったこの試合は初球で決まったようなものだった。

 初回、高橋尚は、初球直球が抜け先頭の竹村春樹(3年)の頭に死球を与えてしまう。どよめく場内。続く服部将光(3年)にきっちりと送られ一死二塁されるが、3番山根佑太(3年)、4番・高田涼太(3年)を抑え、初回のピンチは何とか乗り切る。

 だが、高橋尚はその後もインコースへ直球が投げられない。浦和学院打線相手にインコースが投げられなければ勝負にならない。加えて前日川越東は2試合目で試合終了は17時頃、決勝は翌日10:00開始で疲労の取れない2年生投手にはやや酷なマウンドとなった。決勝独特の雰囲気もあったのであろう。案の定、2回表に捉えられる。

 この回先頭の木暮騎士(3年)がセンター前ヒットで出塁すると、続く斎藤良介(3年)にも変化球であったが、頭に死球を与え無死一、二塁とピンチを招く。続く西川元気(3年)に送られ一死ニ、三塁、ここで8番・小島という場面で浦和学院ベンチのサインはスクイズ。このスクイズは外すが、二死後小島にレフト前タイムリーを浴びると、続く津田翔希(1年)にもライト前タイムリーを浴び2点を先制される。

 立ち直る気配のない高橋尚は、3回表もこの回先頭の山根に死球を与えると、今大会当たりの出ていない高田にもライト前ヒットを浴びる。続く木暮に四球を出し無死満塁とされた所でマウンドを降りる。代わった2番手・山本誠也(3年)も2ストライクから斎藤にレフト前タイムリーを浴びると、西川、小島にも連打を浴びるなど5安打にエラーが絡み6点を奪われ8対0とされる。これで勝負の大勢は決した。

 一方の小島も決して本来の投球ではなかった。もちろん点差に連投の疲れもあったであろうが、毎回ランナーを背負うなど5四死球を出し、9安打を浴びたが、川越東の攻撃のキーマン小寺、長野をノーヒットに抑えるなど要所は締め1失点で切り抜ける辺りはさすがだ。

 その後も攻撃の手を緩めなかった浦和学院は、6回に西川の2点タイムリー二塁打、8回には小島、竹村、服部にタイムリーが生まれるなどさらに6点を奪う。浦和学院打線がこれまでの鬱憤を晴らすべく爆発し18安打16得点を奪い圧勝で埼玉県の夏連覇を飾った。

 


 

 浦和学院はこれでまずは春夏連覇への挑戦権を勝ち取った。やや力の差があったとはいえ高田に2安打が生まれるなど18安打を放ったことは今後へ弾みがつく試合となったはずだ。今大会はなかなか打線が爆発せず苦戦の連続であった。
 それでも最後はエース小島が抜群の安定感をみせ夏の切符を勝ちとった。とはいえ夏の甲子園で優勝するためには小島一人では厳しい。そのためにも山口瑠偉(3年)の復活は必須条件となってくる。エース小島を全員でバックアップする、甲子園ではより全員が結束し是非埼玉県へ真紅の優勝旗を持ち帰って欲しい。

 一方の川越東だが、この試合悔やむべき点は3つある。まず一つ目はこの試合これまで5試合でエラーが一つだった堅い守備が乱れてしまったこと。そして、2つ目はエース・高橋尚が秋の頃の投球ファームに最後まで修正できなかったこと。そして、3つ目は1~3番に左打者を並べるなど打順を大幅に動かしてしまったことだ。これはおそらく左打者に対し、あまりインコースへ厳しい投球ができない小島への対策でもあったのであろう。結果、小島から9安打を放ったが単発に終わり集中打は生まれなかった。

 シード校の早期敗退など下克上の埼玉大会の象徴で、打線の勢いそのままに初の決勝まで上り詰め今大会埼玉県で話題の中心にいた川越東、これはスポーツ校でない彼らにとってすごいことだ。だが、最後の相手は春の全国王者浦和学院、この山はあまりにも高すぎた。
 勢いだけではどうにもならない相手であった。だが、彼らは15点差をつけられた最終回でも選手達も応援団も最後まで決して諦めなかった。長野創太(2年)は長打を狙い、長野以外の右打者は打席で動きながら執拗に駆け引きをする。これは右打者がベースに覆い被さってきてもきっちりとインコースへ制球できる対小島対策として考えていたことだ。その姿勢は賞賛に値する。

 また、主将の前川龍太郎(3年)、ゲームキャプテン高梨公輔(3年)を中心に途中監督不在の時期も経験しながら自分達で考えチームをまとめ決勝まで来た。幸い、川越東にはバッテリーが残り、今大会は大会中の死球の影響で本来の調子を取り戻すことができなかったが、リードオフマンの巧打者・渡部遥介(2年)もいる。新チームはこの決勝の悔しさを秋以降に活かしてもらいたい。特に高橋尚は本来の投球フォームを取り戻せば、昨秋の練習試合習志野戦で完投勝利し、新人戦で聖望学園相手に完封できる投手だ。秋以降の彼の復活に期待したい。

(文=南 英博)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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