沖縄尚学vs真和志
先制、逆転、同点、そしてサヨナラ!全てを凝縮した最高のゲーム
選抜出場としての意地、そして名門のプライドを懸ける沖縄尚学。対するは春季準優勝で、中学からの気心知れたメンバーで甲子園を目指す真和志。この年代の猛者たちが集まる両校の戦いは、まるで真っ二つに別れて雌雄を決した関ヶ原の戦いのようでもあった。そんな空気の中、先制パンチを食らわしたのは真和志だった。
初球、いきなり快音を響かせて真和志の核弾頭東大貴が左中間へツーベースヒット。犠打で送ったのち、チームトップ打率の呉屋正之助は倒れたが、4番砂邊大州がレフト前に運び三塁走者を迎え入れた。先制点をもらった譜久村誠悟もこれまでの連投を思わせない快投。前半5回を終えて沖縄尚学打線を僅か2安打(うち内野安打1本)、三塁を踏ませないナイスピッチングを披露した。
譜久村に訪れる魔の6回
「試合の頭である1回と6回は気を付けるようにしている」と話してた譜久村。その6回裏、これまで相手へ傾きかけた流れを阻止していたが、この日は止められなかった。ワンアウトからセカンドゴロを後ろへ弾くエラーで出塁した走者を、自らのワイルドピッチで進塁させると次打者へデッドボールを与え一・二塁。この悪い流れを何とか抑えようと必死の譜久村だが、赤嶺謙にレフト前へ運ばれ満塁のピンチを背負う。ここで恐怖の6番平良勇貴がベンチの期待に応えライトへ引っ張る同点打。なお満塁としたところで沖縄尚学ベンチが長打力のある安里健を代打として送ると、キッチリとライトへ犠牲フライを打ち上げ逆転に成功した。北中城戦のサヨナラ勝ちで得た粘り強さが、糸満戦ではツーアウトからの得点となり、この日も相手から得たワンチャンスをしっかりものにした。
[page_break:負けたくない意地!土壇場での同点劇]負けたくない意地!土壇場での同点劇
追い掛ける立場となった真和志だが、6回からリリーフした沖縄尚学・宇良淳の前になかなか走者をためられない。そして迎えた9回表、それまで絶不調だった古謝佑弥がレフト前へヒットを放ち犠打で一死二塁。まだ終わってないぞ!そう伝えるように譜久村がベンチ横に出て肩を温める中、女房役の佐喜眞拓哉が宇良の球を捉える!打球はセンターへ転がり二塁走者が生還。甲子園へ行く!その強い気持ちが生み出した土壇場での同点劇と化した準決勝の第二試合は、昨年の第二試合と同じように延長戦へと突入していった。
エースvs4番!固唾をのむ珠玉の対決
沖縄尚学は10回表、この大会まだ未登板ながら次のエースとして期待がかかる山城大智をマウンドへ送る。選手権大会という特別な舞台、さらに延長戦からの登板ではプレッシャーがかかっても不思議ではないが、そこはさすがに名門の代表。二人から三振を奪うなどアッパレな投球内容でサヨナラのお膳立てをした。
その裏沖縄尚学は1番諸見里匠から。打球はショートゴロとなるが悪送球で出塁。犠打で進塁すると、空いている一塁へ名嘉昇司が敬遠気味の四球で歩き、一死一・二塁となってエースvs4番が対峙する形となった。
そして運命のカウント3B-1Sからの5球目、柴引佑真の打球はセカンドの頭上を襲う。キャッチするかと思うような打球はギリギリ頭を越える!その難しい判断をした二塁走者の諸見里が三塁を蹴る!中継からボールが返ってくる!主審の手が横に広がる!劇的なサヨナラに割れんばかりの歓声にわく沖縄尚学のベンチとスタンド。その瞬間、脇でもう一人のヒーローが好走塁を見せた諸見里へ祝福の手を差し伸べていた。キャッチャーカバーに走っていた譜久村が、全てが終わったことを悟ったように涙を浮かべながら諸見里を抱き讃えていたのだ。
先制、逆転、同点、そして延長でのサヨナラ。野球の醍醐味全てを凝縮したような最高のゲームに興奮し、最後は高校野球らしい真和志ナインの爽やかな姿に胸を打たれたこの日であった。
(文=當山雅通)
沖縄尚学 | TEAM | 真和志 | ||
守備位置 | 氏名 | 打順 | 守備位置 | 氏名 |
遊撃 | 諸見里 匠 | 1番 | 中堅 | 東 大貴 |
中堅 | 知念佑哉 | 2番 | 二塁 | 比嘉辰樹 |
左翼 | 名嘉昇司 | 3番 | 右翼 | 呉屋正之助 |
一塁 | 柴引佑真 | 4番 | 左翼 | 砂邊大州 |
右翼 | 赤嶺 謙 | 5番 | 投手 | 譜久村誠悟 |
二塁 | 平良勇貴 | 6番 | 一塁 | 古謝佑弥 |
三塁 | 久保柊人 | 7番 | 三塁 | 松川義孝 |
投手 | 比嘉健一朗 | 8番 | 捕手 | 佐喜眞拓哉 |
捕手 | 具志堅秀樹 | 9番 | 遊撃 | 津波拓海 |