浦添商vs開邦
格上の前年度王者を相手に一歩も引かなかった開邦ナイン
過去の浦添商の記録を振り返る。
浦添商 68勝29敗1分、勝率.701
沖縄大会優勝4回(甲子園ベスト4 2回)、準優勝2回、ベスト4 4回
一方で、開邦は、これまで2勝11敗、勝率.182。2005,07年の二回戦進出が最高位※沖縄県夏の選手権大会記録(2012年終了時)。
今夏の三回戦で、沖縄県四天王の一つとして挙げられる浦添商に挑戦したのが、今年創立初の二回戦を突破した開邦ナイン。下馬評も何も、とにかく全てが格上の相手を迎えることとなった開邦だが、彼らは見事なまでに浦添商を苦しめたのだ。
初回、浦添商の先発・照屋樹の制球が定まらず、開邦は伊佐碧のヒットと二つの四死球で一死満塁のチャンスを迎える。ここで大城幸太朗が見事に一、二塁間を破って三塁走者が生還。
失うものは何もないチャレンジャーの開邦がボードに先制点を刻んだ。その直後、二塁をオーバーランしていた走者を逃さず刺し、失点を最小限で食い止めるあたりが浦添商だ。
追い掛ける立場となった浦添商だが、2回にヒットも二つの四死球で満塁として、開邦・伊佐のワイルドピッチで同点。さらに3回には、ニ死二塁から宮城拓朗がレフトへ運び逆転に成功した。このままズルズルといきかねない展開だったが、伊佐はその後、浦添商打線を手玉に取り、2対1のまま6回を投げ終えたのだった。
王者の意地で終盤4点を加えた浦添商が2年連続14度目のベスト8
浦添商は7回、ヒットと死球で一、二塁とし犠打で進塁。ここで代打に送られた金城結が、期待に答える左中間への2点タイムリー!さらに8回にも2点を追加し試合を決定付け、14度目となるベスト8進出を果たした。
敗れた開邦だが、1回裏、大城利修にレフトへツーベースヒットを打たれ犠打で三塁へ進められたが、伊佐が粘り強く投げてショートゴロに斬り、本塁を狙った大城をタッチアウトにして同点を免れた場面や、4回を終えてヒットの数で2本上回るなど、6回までは分からない試合展開を演じてみせた。
8番に座った本永宙(もとなが・たかき)が3打数3安打1四球とすれば、高校から本格的にピッチャーとしてマウンドに立った伊佐も、165cmと小柄ながら二年のときに監督から伝授された宜野座カーブを駆使して浦添商打線を最後まで苦しめるなど、観ている者が感動する試合だった。
ニ死ながら一、二塁で9回の最後の打席に向かう伊佐が、悲壮感など全く見せずに屈託のない笑顔をベンチのナインに見せたときなど、高校野球最高峰の最後の夏で、あの浦添商と真剣試合が出来ることを喜び、楽しんでいたのだなと思った。
それでもやはり試合後は涙を零した開邦ナインに、心からこう伝えたい。
「泣くな!君たちは最後に全てを出し切って、最高の試合をやり遂げた。開邦の歴史に新しい1ページを加えた誇りが君たちの夏の証しだ」と。
(文=當山雅通)
開邦 | TEAM | 浦添商 | ||
守備位置 | 氏名 | 打順 | 守備位置 | 氏名 |
右翼 | 穂積大貴 | 1番 | 中堅 | 大城利修 |
遊撃 | 伊波愛斗 | 2番 | 遊撃 | 喜瀬由希 |
投手 | 伊佐 碧 | 3番 | 右翼 | 宮城拓朗 |
捕手 | 玉城 駿 | 4番 | 二塁 | 伊計一樹 |
三塁 | 大城幸太朗 | 5番 | 投手 | 照屋 樹 |
一塁 | 高江洲龍太郎 | 6番 | 一塁 | 比嘉良弥 |
二塁 | 与那嶺 克 | 7番 | 三塁 | 新里龍平 |
中堅 | 本永 宙 | 8番 | 捕手 | 島袋一樹 |
左翼 | 儀間敦生 | 9番 | 左翼 | 新崎翔也 |