美里工vs宮古
10ヶ月振りの公式戦登板で10奪三振!見事大役を果たした長嶺飛翔
春の大会前、それまでエースナンバーを付けていた左の島袋倫が故障した。それが響いたのか、第四シードとして臨んだ春の初戦は投手陣が崩壊し、具志川商に2対9とまさかのコールド負けを喫してしまった。夏へ向けて一抹の不安が漂ったとしても不思議では無かっただろう。
しかし、それを払拭する一人の男が復活を遂げていた。長嶺飛翔(つばさ)だ。1年生ながら昨年の夏マウンドを経験した宮城諒太や、1年生中央大会で右のエースとして活躍した伊波友和らを置いて、この夏エースナンバーを付けた右のサイドスローは、実は昨年の新人大会の真っ最中に腰を痛めて故障してしまい、満足に投げられるようになるまで半年以上を要した。
春の県大会以降から試合に登板したという長嶺はそれまでの間、上半身や手首を鍛えることに徹する。決して腐らなかったその姿勢を高く評価した神谷監督は、また県内外の他校との練習試合を通して成績を残してきた右腕にこの夏の大事な初戦を託した。その相手の宮古は、新人中央大会で優勝し、秋の県大会でもベスト4入りを果たすなど、シードにも劣らない実力を有する。そうして幕を開けた試合、先制したのは沖縄宮古だった。
1回裏、沖縄宮古は1番宮國汰都が四球で出塁。犠打で進めたのち、4番来間正裕が甘く入ったスライダーを捉えセンター前に運び、二塁から宮國汰が一気に生還した。公式戦としては約10ヶ月振りの長嶺にとって、格上の相手からの洗礼を浴びせられたかっこうとなったように見えた。だが、
低目低目を意識して丁寧に投げることを心掛けていた長嶺は、同点に追い付いた3回の裏のアウト三つを全て三振に斬り沖縄宮古打線を圧倒し始め、終わってみたら二桁奪三振の快投を演じた。
5人の三年生のためにも!気迫がこもった主将の一打がチームを乗せた
3年生が作ったチャンスに、下級生たちの気持ちも乗った。振り出しに戻った4回表、美里工は先頭打者の島袋優が右中間へ大きな当たりを放つ二塁打で出塁。その後、一死一・三塁として打席には2年生ながら強烈なリーダーシップでナインを引っ張る高江洲大夢(ひろむ)主将が打席へ。3年生の島袋優の気持ちが伝わったという打球はレフトへ。神谷監督と高江洲も犠牲フライかなと思ったが予想以上に伸びてレフトの頭上を越える逆転タイムリー!ここで沖縄宮古ベンチは、同一イニングで2本の長打を打たれた山里弘一を諦め、二枚看板のもう一人、久貝拓夢を早くもリリーフに送った。春の県大会で145kmが出たという豪腕の登場に、球場を埋め尽くしたファンの目線も集まる。だが、美里工のもう一人の3年生である比嘉恵次郎は、久貝の外の球に逆らわず一、二塁間をしぶとく破るライト前タイムリー。さらに無警戒だった沖縄宮古バッテリーの虚をつくスクイズが見事に成功して、この回大きな3点を追加した。
上げるな!転がして足を絡めろ!
5回にも、一死一、三塁からファーストゴロの間に1点を奪った美里工。この夏を迎えるまでは、秋と春の反省をふまえ、球を打ち上げず転がすバッティング、という指揮官の思いを忠実に守る野球で、宮古にダメージを蓄積させていく。沖縄宮古も4回裏、2本のヒットを記録するが、犠打が失敗するなど得点に結びつくことが出来ない。そして完全に立ち直った長嶺の前に、5回以降はヒットが僅かに1本のみ。8回には1番から三者連続三振を喫するなど、生まれた焦りを抑えることが出来ず、何も出来ないまま最後の夏を終えてしまった。
だが、新人中央大会で頂点に立ち、宮古島に初めての優勝旗をもたらせた功績は島民の心に深く刻み込まれている。彼らのたゆまぬ努力と最後の夏の奮闘を地元からの応援団は、大きな拍手で称えた。
(文=當山雅通)
美里工 | TEAM | 宮古 | ||
守備位置 | 氏名 | 打順 | 守備位置 | 氏名 |
中堅 | 神田大輝 | 1番 | 中堅 | 宮國汰都 |
遊撃 | 西蔵當 祥 | 2番 | 捕手 | 下地佳貴 |
左翼 | 島袋 優 | 3番 | 遊撃 | 佐和田一磨 |
一塁 | 宮城諒太 | 4番 | 一塁 | 来間正裕 |
右翼 | 松堂 正 | 5番 | 左翼 | 宮國泰斗 |
三塁 | 高江洲大夢 | 6番 | 投手 | 山里弘一 |
二塁 | 比嘉恵次郎 | 7番 | 三塁 | 池間 涼 |
捕手 | 與那嶺翔 | 8番 | 右翼 | 上地 樹 |
投手 | 長嶺飛翔 | 9番 | 二塁 | 池田 凛 |