鹿児島工vs神村学園
小園孝太(鹿児島工)
最高の投球 鹿児島工
両投手陣の好投、好守で互いにがっぷり四つに組み、拮抗した好試合は鹿児島工が延長12回でサヨナラ勝ちだった。
鹿児島工の小園孝太(3年)にとっては、背番号1を背負っての「デビュー戦」。強豪・神村学園を相手に12回を1人で投げ抜いての完封劇は「出来過ぎです」と照れた。
春までの背番号は4で、二塁手との兼務だったが「投手に集中して成長させる」(下池大哉監督)べく、4月からは投手に専念していた。背番号4でも先発を任されるなど、投手としての期待は高かったが、中盤に四死球をきっかけに崩れるのが大きな課題だった。
この試合でも3―5回と1球もストライクが入らない四球を1個ずつ出したが、そこで崩れることなく修正できたところに春からの成長があった。修正のポイントは「身体の軸と、間をとるのを意識すること」(小園)。崩れそうな兆候が見えれば、捕手の田中大樹(3年)がうまく間をとって落ち着かせてくれた。「日頃から2人でコミュニケーションをよくとっている。小園は良いキャッチャーに恵まれましたよ」(下池監督)。
「ヤマ場」の中盤を過ぎると、小園の投球は回を追うごとに切れ味が増し、マウンドにいるのが楽しくてたまらない様子がうかがえた。12回を1人で投げ抜いたが、球数は131球とそれほど多くない。1イニングの球数が10球前後で安定し、丁寧に打たせて取る投球が最後まで崩れなかった。強打の神村打線に連打を許さず、散発7安打の投球を、田中は「球威が最後まで落ちなかった。今までで最高の投球だった」と実感できた。
終盤からは再三好機を作りながらも、なかなか決勝点が奪えない中、最後は田中のレフト線二塁打がきっかけになった。送りバントが相手の悪送球を誘って、田中が決勝のホームを踏み、ドラマチックな試合を締めくくった。
(文=政 純一郎)