済美平成中等教育・松山北 vs 松山城南
6回表に捕手から投手へ回った連合チーム・新山拓実(済美平成3年)
済美平成・松山北の異色進学校連合、「頭脳」で歴史的初勝利!
少人数校野球部に公式戦出場機会を与えるべく、全国各地でその芽が吹いている「連合チーム」。野球どころ、愛媛県でも少子化の傾向はいかんともしがたく、今大会では2つの連合チームがはじめて誕生することになった。
1つは南予地区の近隣県立高校同士による「三間、津島連合」。そしてもう1つがこの試合で登場する「済美平成中等教育学校・松山北連合」である。
が、ここでお気づきになった読者の皆さんもいることだろう。済美平成は今センバツに出場する済美と同系列「済美学園」が運営する中高一貫私学進学校。
松山北は第59回(昭和62年)センバツ出場経験を持ち、阪神の左セットアッパー筒井和也などプロ野球選手も輩出している公立進学校。
すなわち、全国でも極めて稀な私学と公立の合同チームなのだ。
済美平成の佐藤良信・前監督が松山北高校出身であった縁から結成された連合チーム。ただ、済美平成5名に松山北の2年生4名が加わった連合チームは、3月から合同練習を始めたとは思えないクオリティー高き戦いを随所に展開してくれた。
例えばチーム唯一の3年生である新山拓実(済美平成)。5回まで先発右腕・矢野椋太(済美平成2年)の特徴を存分に活かしたリードと2塁送球2秒を切る強肩で魅せた彼は6回からは一転、伸びのあるストレートとスライダー、フォークを駆使しマウンドで躍動。まるで滑川高時代の久保田智之(阪神)のような「あいつにつないだら勝つ」(山本篤志監督)必勝パターンで、チームに流れを引き寄せた。
歴史的勝利を示すマドンナスタジアムのスコアボード
松山北の2年生たちも、そこについていくのみに留まらず個々が己の役割を果たす活躍を見せた。2番・岡崎颯人は3回裏の同点打含む3安打。「松山北のベンチ入りから外れたことは正直悔しかったけど、練習試合を通じて団結を深めることができた」6番・谷口竜星は6回に「北高で教わった」積極的走塁で同点への糸口を作った。
そして3対3の同点で迎えた8回裏一死一・三塁。9番・矢野の打球が一・二塁間を破り、谷口がホームを踏んだ瞬間、連合チームの疑念は確信へと変わった。4対3。昨秋は中予予選で四国大会出場の松山聖陵をあと一歩まで追い詰めた松山城南相手に。彼らは勝利。それは同時に愛媛県の高校野球史ではじめて連合チームが勝利をつかんだ瞬間でもあった。
このチームは4月から済美平成中野球部から7名の新入生が入学してくるため、今回限りで解散。ただし、「ここまでやってくれるとは」と山本監督をも驚かせた頭脳連合チームの快進撃は「県大会に出たい」9名の気持ちが一丸となっている限り、まだまだ続いていくことだろう。
(文・寺下友徳)