試合レポート

仙台育英vs関西

2012.11.14

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仙台育英vs関西 | 高校野球ドットコム

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上林(仙台育英)

強打の仙台育英 決勝戦で爆発! 

初の決勝進出を果たした仙台育英と05年以来の決勝進出を果たし、初優勝を目指す関西の対決だ。

先行したのは関西だった。
1回表、1番逢澤 崚介(1年)が、仙台育英のエース・鈴木 天斗(2年)の直球を引っ張りライトスタンドへ飛び込む先頭打者ホームランで1点を先制する。
2回表にも二死から逢澤が出塁。2番小郷 裕哉(1年)が左中間を破る長打を放つと、逢澤が俊足を生かして、一気にホームイン。2点を先行する。
関西ペースで進んでいたが3回裏、仙台育英が反撃に出る。その攻撃前、仙台育英ナインは一度集まった。主将の上林 誠和(2年)が説明する。

「1打席目はみんな自由に打たせるんですけど、2打席目は外角中心にストレート、スライダーが集まっているので、ストレートのタイミングで待って、スライダーにも合わせながら打つことを徹底させました」

まず先頭の1番熊谷 敬宥(2年)がサードへの内野安打で出塁。2番菊名 裕貴(2年)は三塁前へバントを仕掛ける。関西のサード・堅田 拓己(2年)が処理するが、間に合わずセーフ。連続内野安打で無死一、二塁のチャンスとなり、3番長谷川 寛(2年)が四球で満塁。
この場面で前日に満塁本塁打を放った4番上林が、2ボール2ストライクから高めのスライダーに詰まりながらもセンター前へ運び、同点の2点タイムリーとなった。続く5番水間 俊樹(2年)は鋭いショートライナーで一死となったが、ここから仙台育英打線が爆発する。

6番小林 遼(2年)が右中間を破る二塁打で、二者生還し4対2。7番加藤 尚也(2年)のレフト前ヒットと、8番佐藤 聖也(1年)のライト前ヒットで5点目。
9番鈴木がセンター前タイムリーで6対2。1番熊谷がライト前ヒットで続くと、2番菊名はレフト前タイムリー。3番長谷川は2ボール2ストライクから外角ストレートを打ってレフトへ2点タイムリー。
このイニングはなんと9得点。7連打など10本のヒットを浴びせて、関西のエース児山 祐斗(2年)を降板させた。


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仙台育英歓喜の瞬間

先ほど児山対策として外角ストレートに絞りながら、スライダーにも合わせる作戦を徹底させたと書いた。この指示は選手自身が話しあった結果によるものだった。仙台育英の佐々木順一郎監督は3回の攻撃については指示を送っていないという。

「特に具体的な指示は送っていません。選手たちが話しあって何を打つべきかを決めたと思います」と、選手の自主性に任せていた。

仙台育英の選手たちは外角球に狙いを絞り、右打者はライト方向へ。左打者はレフト方向へ打ち返していた。関西バッテリーは外角の際どいところへ投げて、ゴロを打たせるつもりだった。だが仙台育英の打者は関西バッテリーの攻めを読んで、鮮やかに逆方向に打ち返していったのだ。選手の自主性で投手を攻略できる。強打の仙台育英、後半に強い仙台育英と呼ばれる今年のチームだが、その秘訣は選手各自が何を狙うべきかを見出し、それを実行できる能力ではないだろうか。

佐々木監督は今のチームの特徴である集中打が飛び出て手応えを感じていた。

「先行された時は5回まで1点差ぐらいまで行ければいいと考えておりました。うちのチームは後半で点が取れるチームでありますし、後半で勝負出来ればいいかなと考えておりました。そこまでチャンスを掴むことができないのですが、あの回のチャンスで一気に打つことが出来て、うちの特徴が出たかなと思います。思えば、先頭の熊谷が内野安打で出塁しました。あれがセーフになったのが大きかったかなと思っております」

ゲームプランとしては後半勝負。予想外の大量点だった。

3回まで被安打5と立ち上がりが悪かったエースの鈴木。9点の援護で気を楽にしたのか、落ち着いた投球を見せる。常時130キロ~135キロ前後の速球、スライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。3回まで速球、変化球ともに高めに浮いていたが、4回以降から低めにボールが集まり、内角にも厳しく攻めるなど、幅広い投球を見せ、関西打線を抑え込んでいた。

関西はその後、逢澤から田中 雅之(1年)、柳本 千影(2年)、家高 健(1年)と4投手の継投で、2失点で凌ぐ。

そして9回表、8回からマウンドに上がった馬場 皐輔(2年)が、最後の打者を空振り三振に打ち取り試合終了。仙台育英が明治神宮大会初優勝を果たした。


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優勝旗を手に球場内を行進する仙台育英ナイン

初優勝した仙台育英
強打の仙台育英と呼ばれるまでのチームになったのは、ただ振れる選手が多いだけではない。この日の児山攻略のように、選手各自が狙い球を決めて、それを徹底させ、実行する能力ではないだろうか。一人の能力に頼るのではなく、チームが何をするべきかを徹底させたことが東北大会優勝、明治神宮大会優勝につながった。

そして後半に点が取れることが大きな特徴である。東北大会は4試合32得点のうち6回以降の得点は27得点。
監督、選手ともに「うちは後半に強いから後半勝負」と口にしており、それを暗示しながら試合に臨んでいるようだった。ポジティブな思考が後半の強さを生んだことは間違いない。
今大会の仙台育英の総得点25得点。そのうち6回以降の10得点。本塁打は2本出ており、明治神宮大会でも後半に強いことを証明した。

初優勝を遂げた仙台育英に慢心はない。主将の上林は今年春夏連覇を遂げた大阪桐蔭を目標にあげた。

「新チームがスタートした時に、大阪桐蔭を目標にしようと思っていました。国体で優勝して良い流れに来ていますが、課題はイニングによって雑な野球になってしまうことです。いつも監督さんに言われるのですが、最初から最後までしっかりやりなさいと言われるのですが、8回に2つの押し出しで点を与えてしまい、そこが自分たちの甘さだと思います。今度は追われる立場になったので、勝てるチームになるためにしっかりと練習していきたいと思います」

気を引き締めていた。今回の優勝で2年連続東北地区優勝となった。今年の仙台育英は火がついたら止まらない打撃をするところは光星学院と似ている。多少の失点でも跳ね返してしまう驚異の破壊力。来年へ向け投打の実力を高め、悲願の甲子園初優勝を目指す。


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課題と収穫の明治神宮大会となった児玉(関西)

一方で関西。スタメンのうち1年生が4人と若いチームが神宮大会決勝まで勝ち上がったのは大健闘だった。しかし仙台育英に敗退し、実力差を痛感している様子だった。
「選手は県大会から1戦1戦力をつけてきた。良く頑張ったと思うが、身体の力、大きな、選手の層を含めて、全国のレベルではまだまだ。もっと鍛えていかなければならないと思います」

関西の江浦滋泰監督はここまで勝ち上がった選手の健闘をたたえたが、来年へ向けて多くの課題をあげていた。

そしてエースの児山も仙台育英打線に対して、多くの課題を見つけたようだ。
「勝負にいったのですが、制球が甘くなってしまいました。打たれたことで、相手が何を狙っているかを判断できず、自分の投球に集中できていませんでした。自分がもう少し冷静になって投球をしていれば、失点は抑えられたと思います。ストレートの球威、変化球のキレ含めて、総合的にレベルアップしていきたいですし、打者との駆け引きを覚えたいと思います」

選手のポテンシャルは高く、準決勝の春江工業戦のように嵌った時は止められないような打力を持っている。ただ関西がさらにワンランク上に行くにエース児山が課題に上げた相手との駆け引きが大事になっていくのではないだろうか。この敗戦を糧にして、来年は一味違う関西野球を見せてくれることを期待したい。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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