佐野日大vs東海大甲府
佐野日大・保坂君
初回に6連打で4点の佐野日大が逃げ切る
この夏、甲子園でベスト4に進出した東海大甲府。新チーム作りが、いくらか遅れるのかという心配もあったが、秋季大会も確実に勝ち上がって、山梨県大会2位校として、関東大会に進出。層の厚さを示している。また、佐野日大は新チームのスタート段階から、県内での下馬評は高く、秋季県大会は優勝候補筆頭と推す声も多かったが、その評判通りの戦いで県大会を制し、自信の関東大会進出だった。
その佐野日大が初回、1死から藤倉君、片野君の連続長打を含む、6連打で4点を奪った。この佐野日大の勢いで、どうなることかと思われた試合だったが、終わってみれば競り合いの試合という印象だった。
立ち上がりの6連打はいくらかアンラッキーなポテン安打もあってペースを作れなかった東海大甲府の中村槙君だったが、投げていくうちに立ち直っていき試合が引き締まっていったということもあった。
ただ、結果的には東海大甲府にしてみれば、やはり初回の4失点はあまりにも大きかった。
4点を追う東海大甲府は、2回にすぐに2四球とボークに安打で無死満塁とすると、ここで佐野日大の背番号11で1年生の先発田嶋君を退け、エースナンバーをつけた榎本君を引っ張り出し、暴投で1点を返す。しかし、その後を榎本君はしっかり抑えていく。
佐野日大は、初回以降はいささか沈黙気味になってしまい、その間に東海大甲府は5回に注目の渡邉諒君が、通算22本目となる2ランをレフトスタンドに叩き込んで1点差となった。これで一気に追いついて試合の流れは完全に自分たちの方へ持ってきたいところであったのだろうが、佐野日大の榎本君も踏ん張って、東海大甲府も追いつき切れなかった。
そうこうしているうちに、佐野日大は7回に、2死から4番並木君のセンター前ヒットと保坂君のレフト線二塁打で再び点差を広げていった。
東海大甲府・中村勇君
追いかける東海大甲府は8回、3番山本君と続く秋山君の連打で1死一、三塁として、高橋亮君の犠牲フライで再び1点差とする。しかし、その裏佐野日大も7番伊藤優君がレフトへ貴重なソロ本塁打を放って、またしても突き放した。東海大甲府にとっては、追いつけそうで追いつけないというじれったさを引きずりつつ、結局9回を迎えてあと一歩届かず、苦杯を舐めることとなった。
東海大甲府の村中秀人監督は、「追い上げながらも引き離されるという展開は、やはりそれだけの力だったということでしょうね。ただ、このチームはこれからまだ先に伸びていく余地はいっぱいあると思います」と、この夏チームを甲子園4強に導いている指揮官は、新チームにも確実に手ごたえを感じている様子ではあった。
結果的に、初回のいささかラッキーもあった6連打の貯金が効いた形になった佐野日大の松本弘司監督は、「初回にいきなり4点も取っちゃって、それで却って舞い上がっちゃったのかなぁ」と、期待して送り出した1年生の田嶋君が2回に崩れたことを気遣っていた。それでも、その後にリリーフに送り込んだ榎本君が自分のリズムで投球をしていったことで、追いつかれずに逃げ切れたことに安堵していた。
「関東大会というプレッシャーもあったのかもしれませんけれども、試合が進んでいくうちに落ち着きを取り戻してくれました」と、選手たちが平常心に戻れたことを評価した。さらに、「8回の伊藤の一発は大きかったですね。あそこで、思い切って振っていっていかれたことがよかったです」と、7番打者の一発を称えていた。
(文=手束仁)