東総工vs浦安
東総工・掛巣君
東総工がしぶとく、辛抱の試合を制して県大会進出
試合前に両チームが整列して、挨拶を交わしてそれぞれのベンチと守備位置へ、選手たちが散るのだが、一瞬どっちがどっちだったのかなと見間違うくらいにユニホームがよく似ていた。特に、特徴的な濃紺にエンジ系の庇という帽子のスタイルは、光星学院型とも桐光学園型ともいえそうなのだが、近年比較的目にするようになったデザインである。そんな両校の対決となったが、似ていたのはユニホームだけではなかった。
野球のスタイルもよく似ていて、共に投手を中心とした守り型のチームで、長打や連打が出るというよりは、少ない安打や四死球などで得た好機をバントや盗塁を仕掛けながら、何とかして得点をもぎ取っていこうという姿勢だ。だから、お互いが辛抱の仕合という戦い方になっていくのは否めない。
先制したのは東総工だった。初回、先頭の熱田君が四球で出ると、バントで進め2死となって、四番の伊藤一君がレフトへヒットを放ちして二塁走者を還した。さらに2回にも、六番伊藤真君が一塁手を強襲するヒットで出ると、バントできっちりと進め、九番遠藤君が還して2点目。ここまでの点の取り方は、まさに越川恭伸監督が思い描いていた通りの理想的なものだった。
浦安は、大塚知久監督が思っていたよりも、藤平君の投球内容がもう一つよくなかったということもあったようだ。これに対して、東総工の寺島君はストレートも伸びていたし、力を感じさせる投球だった。失策で走者を出しても、その後を抑えて得点を許さず、5回までは許した安打も1本のみというものである。
しかし、味方打線も3回以降は、浦安の藤平投手の立ち直りもあって、追加点が取れないままだった。そして6回、浦安がポテン安打や送りバントがヒットになるなどで1死満塁を作る。寺島君も踏ん張ったのだが、飛球が落球となり、二者が還って同点となった。東総工にしてみれば、試合の流れとしては非常に厭な感じの同点のされ方だった。それでも、寺島君は腐ることなくその後を抑えて味方の反撃を待った。
そして迎えた9回。延長戦も視野に入ってきたところだったが、先頭の七番高木君は一、二塁間を破って出塁。絶対に送らなくてはいけないバントは、失敗してしまったが、それでも1死から執拗に送り、これが野選を招いて結果的に1死一二塁。さらに、熱田君のバントも安打となって満塁となったところで、続く平野君が執念でセンター前へ運んで、これが決勝点となった。
東総工・遠藤君
越川監督は、「本当に打てないチームなんですよ。バント安打含めて、10本ですか、2試合分出てしまったくらいですね」と苦笑しながらも、「恥ずかしい試合にならなくてよかったですよ。(寺島投手は)無四球なんて初めてじゃないかと思います。実は、春も夏も成長痛もあってベンチに入れられなくて、夏休みもまともに投げられるようになったのは後半からなんですよ。ほとんどぶっつけ本番みたいな感じになっての秋季大会だったんですが、今日はよく投げてくれました」と、好投した寺島君を称えた。
寺島君は、最速141キロをマークしたこともあるというが、スピードガンを意識しすぎて投球を崩したこともあるくらいなので、スピードガンは封印して、投球はスピードだけではないということを理解していくようにしたという。越川監督としても、寺島君の素質に期待したいからこそ、壊してはいけないという気持ちも強くあるようだ。いずれにしても、県大会でも寺島君の右腕が東総工の浮沈を握ることは間違いない。
夏に出ていたメンバーが故障で秋季大会に出られないということもあるようだ。打線がもう一つというのは、そんなところにも要因があるのだろう。それだけに、さらに寺島君に対する期待が高まっていく。
一方、70人近い部員のいる大所帯の浦安だが、この秋は県大会進出はならなかった。大塚監督は、「やっぱり(藤平投手は)疲れもあったのでしょうかね。ただ、序盤悪かったのが途中持ち直したので、リリーフとして丸石を行かせようかと思っていたのが、タイミングを見ているうちに追いついてしまったので、結局そのまま(藤平投手で)行ってしまいました」と、継投機を思いきれなかったことと、最後にこらえきれなかったことをちょっと悔いていた。
(文=手束仁)