大垣南vs中津商
【大垣南・吉岡】
勝つには勝ったが… 名将、渋い表情
勝つには勝ったが、試合後の大垣南・川本勇監督の表情は険しかった。「偶然で取った得点ばかりで、計算して奪った得点が全然ない。送りバントはできるのにスクイズを失敗したり、走塁判断で明らかなミスが出たり…。(次戦までの1週間で立て直せば、の問いに対して)夏の大会や秋季地区大会と同じミスをしまいと、そこから今日までずっと取り組んできたのに、こんな内容では…」。相手の隙を突き、広い視野を持った野球を目指す指揮官にとって、この日のゲームは「投げるだけ、捕るだけ、打つだけ」の不本意なゲームに映った。
それでも当記事では、良かった面を是非紹介したいと思う。大垣南で特に目を引いたのは、先発の吉岡朋優(2年)だ。178センチ・62キロと体はまだ細いが、腕の振りにしなりとスピードがあり、ストレートがかなり走る。最速は130キロ台前半だというが、体感ではもう少し速く感じた。「試合中、川本先生からは『落ち着け』と言われていました。失点した初回は力が入りすぎていましたが、力みすぎては駄目だということを思い出し、3回表以降は自分のピッチングができました」(吉岡)。初回は2暴投で失点したが、終わってみれば3被安打2失点とよく投げた。
攻撃では常にランナーを出しながらも作戦どおりに進められず、もったいないシーンが続いたが、8回裏に勝ち越した。「試合に出発する前の、自校グラウンドでのバッティング練習のときからよく振れていた」(川本監督)という前川駿介(2年)がタイムリーヒットを放ちリードを奪うと、続く久世圭之介(1年)の打球が三塁手のエラーを誘い加点、さらに2番金森光平(2年)がセンター前に弾き返して突き放した。また、初回および5回裏の得点は、いずれも3番細野友輔(2年)のタイムリーヒットによるもの。細野はこの日3安打と気を吐いた。
一方、敗れた中津商も粘りは見せた。1点リードされた直後の6回表、先頭の鈴木良嘉(2年)がヒットで出塁すると、続く2番水野方人(2年)がレフトへ二塁打を放ちあっという間に同点に追いついた。先発の片田仁(1年)は5回2失点でマウンドを降りたが、1年生とは思えぬ雰囲気があり、ボールがしっかり指にかかるようになれば楽しみな存在だ。守備では捕手の所恒輝(2年)がチームをまとめていた。
(文=尾関 雄一朗)