試合レポート

光星学院vs東海大甲府

2012.08.23

全国屈指の3、4番、田村龍弘、北條史也のライバル意識が東海大甲府を粉砕した

 光星学院が1回表早々に勝負を決めた。先頭の天久翔斗(右翼手・右投左打)が右中間フェンスを直撃する二塁打を放ち、2番打者がこれを送って1死三塁。ここで3番田村龍弘(捕手・右投右打)がボールカウント2-2から133キロの高めストレートを払うようにレフトに打ってまず1点。

なおも1死一塁で打席に立つのは北條史也(遊撃手・右投右打)。
5球目の高めに抜けた120キロのフォークボールを前さばきで打つと、センターフライだと思った打球がぐんぐん伸びていき、何とバックスクリーンに飛び込む3ランになった。柔らかく強いリスト、と肉体的な面を賞賛するより、田村が打ったから自分も打つというチーム内のライバル関係が素晴らしい。

3回戦神村学園戦では北條が1回にホームランを打つと田村が3回にホームランを打ち、準々決勝桐光学園戦では好左腕、松井裕樹から田村が8回に0対0の均衡を破る左前タイムリーを放つと、続く北條が左中間を破る二塁打を放って2点を加え、というように、この3、4番は常に刺激し合って好結果を出している。

 
なみに、この試合では北條の2打席連続ホームランに刺激されたのか、9回に田村が3ランを放って東海大甲府にとどめを刺している。北條とのアベックホームランは神村学園戦に続いて2本目。大会出場校中、というより、全国でも最高の3、4番コンビと言っていいだろう。


投手では光星学院の先発、城間竜兵(右投右打)の好投が光っている。これまで背番号「1」の金沢湧紀(右投右打)と2人でチームを支えてきた。次の戦績を見れば2人が田村・北條コンビと同じようなライバル関係を築いていることがわかる。

2回戦  遊学館/城間……9回、安打4、自責点0

3回戦
  神村学園/金沢……5.2回、安打5、自責点2
          城間……3.1回、安打5、自責点0

準々決勝
 桐光学園/金沢……9回、安打3、自責点0
準決勝  東海大甲府/城間……9回、安打9、自責点3

 投手のタイプも2人は似ている。手許で伸びる140キロ台の速いストレートはあってもそれに頼らず、スライダー、カーブを交えた緩急で打者を打ち取っていく。実力が違えば起用法に迷いが生まれるが、金沢、城間はまったく同等なので交互に起用することに躊躇がない。シンプル・イズ・ベスト――これも光星学院の強みだ。


東海大甲府の敗因はいろいろある。1回、2死一塁の場面で捕手の二塁けん制で一塁走者が憤死。2回、1死二塁の場面で投手の一塁けん制で二塁走者が憤死、と拙攻が続いた。

過密日程も響いた。8/12成立学園戦以降、8/17龍谷大平安)、8/19宇部鴻城)、8/21作新学院)、8/22(光星学院)と中1日、中0日と連戦状態が続いたため、この光星学院戦ではエース神原友(右投右打)の先発を断念せざるを得なかった。金沢、城間を擁する光星学院との明暗がここで浮き彫りになる。

1番渡辺諒(2年・遊撃手・右投右打)がヒット1本に封じられたのも敗因の1つだ。渡辺はこの大会中、タイミングの取り方がある試合では早く、ある試合ではゆったりという具合に、迷いの中にあった。ゆったりした動きでタイミングを取った龍谷大平安戦、宇部鴻城戦では好結果を出していたのでそれを続ければよかったと思うが、準々決勝の作新学院戦で結果が出ず、早い動きに戻してしまった。攻撃のキーマンだけに、渡辺が止まるとチームの動きも止まってしまう。

 大阪桐蔭との決勝戦は全国屈指の本格派右腕、藤浪晋太郎VS光星学院が誇る3、4番、田村&北條との対決が勝敗のカギを握っている。
大阪桐蔭準決勝明徳義塾戦、2番手の岸潤一郎(1年・右投右打)の緩急に惑わされ、2回3分の1を安打1、三振3と封じられたことが嫌な材料だ。

9回の攻撃では2番大西友也、3番水本弦、4番田端良基がスライダーにまったくタイミングが合わず、空振りの三振に打ち取られている。2番森友哉(2年・捕手・右投左打)も内外・高低の揺さぶりについていけず3打数0安打と成績下降の兆しが見えている。この上位打線をどう立て直していくか、西谷浩一監督の手腕が問われる一戦になりそうだ。

(文=小関順二)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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