新潟明訓vs県立岐阜商
さらなる上積みへ 低めの制球力を
新潟明訓が2年ぶりの出場。その原動力となったのはエースの竹石 智弥だ。これまで怪我に苦しみ、思うような実力を発揮出来ていなかった。しかし最後の夏へしっかりと土台を固めて、恵まれた才能が開花し、この夏6試合をすべて投げ切り、2年ぶりの甲子園を勝ち取った。
182センチ75キロと華奢で、手足が長く、すらっとした投手体型。身体のバランスも良く、投手としての素材は過去に登場した新潟明訓のエースの中でも最高の逸材かもしれない。
甲子園初舞台で、竹石は躍動した。ワインドアップから振りかぶり、軸足がしっかりと立って、滑らかに体重移動を行い、振り下ろす右のオーバーハンド。速球は常時135キロ~140キロを計時し、最速143キロを計測した。縦回転のかかったストレートは球質が良く、さらに腕の振りが速くなっていけば、空振りの奪える140キロ台のストレートを投げられる投手に成長するだろう。カーブ、スライダー、フォークのコントロール良く投げ分けた。
打線も効率的に点を追加。竹石も6回裏に右中間を破る三塁打を打ち、自身で援護した。試合を優位的に進めていき、7回表に飛び出した高橋快舟のホームランの1失点に抑え、完投勝利を上げた。
本人が課題とするコントロール。無四球だったが、高めへ抜けるストレートが多かった。なぜコントロールが乱れてしまうのか。肉眼で見る限り、彼の投球フォームからコントロールが悪いという印象は受けない。本格派らしい綺麗な投球フォームだ。高めへ抜けるということはリリースポイントが安定していないということだ。リリースポイントを安定させるというのは小手先の意識では腕が縮こまってしまう。考えられるのは壁を作る左手の動きを意識出来ていないと考えられる。左腕のグラブで壁を作り、ターゲットをしっかりと示すことで、制球が安定する。それによりリリースポイントも安定するのではないだろうか。リリースポイントがまだ定まっていない中で、これほどのボールを投げ込むのだから、リリースポイントが安定したらどんなボールを投げ込むかワクワクさせるものがある。
ドラフト目線で見ると素材は良いが、まだ飛び抜けた武器はない。総合的にまとまっているので、大学・社会人で上手く育っていけば、ドラフト戦線に加わる本格派右腕であることは間違いない。
ここまで一人で投げ抜き、ピンチになっても動じず速球を投げ込む姿はマウンド度胸が良く、逞しい投手と感じさせた。3回戦でも粘り強い投球で、ベスト8進出を成し遂げたい。
(文=河嶋宗一)