生野工vs豊中
ロースコアからは見えにくい両エースの出来
豊中の2年生エース・佐藤滉祐は、試合後、溢れる涙をこらえ切れなかった。
「全体的にリズムが悪かったです。調子は悪くなかったのですが、ボールが先行する場面が多くて…。自分が踏ん張りきれなかったです」
立ち上がりは決して悪くなかった。
低めにボールを集めて、1回は三者凡退。だが、2回に3連打を浴びて1点を先取された。「どのヒットも甘いコースの球を打たれました。生野工は下位打線でも力がある」と警戒心を煽られ、以降も毎回のように走者を背負った。それでも併殺を完成させるなど、野手の堅守に助けられた場面もあった。「無失策の野手に助けられた」とバックに感謝した。
粘り強く、持ち前のコントロールを重視しながらマウンドで奮闘したが、5回にも1番狭間翔葵のタイムリーで重たい追加点を奪われた。「自分のピッチングが最後まで出来なかった。チームメイトに申し訳ないです」とエースは悔やんだ。
対する生野工のエース左腕・大田喜陽は7回一死まで無安打に抑える快投を見せた。
威力あるストレートとスライダーを武器に、凡打の山を築いた。「3回戦が終わってから踏み足の位置を変えて、リリースポイントを前にしたらフォームが安定したんです。今日は5回の時点で無安打に抑えていることは知っていましたが、記録よりも勝ちたかったので」と、7回に1安打を許したことも全く意に介さない様子だった。
それでも1点を争う緊迫したゲーム展開の中、小気味良いピッチングが光った。
「ブルペンから調子が良かったけれど、ここまで抑えられるとは思いませんでした」と本人はやや驚いた表情を見せたが、次の試合に向けては「相手にびびらずに、しっかり腕を振っていきたいです。三振よりも低目を意識して投げたい」と、前を見据えていた。
涙の2年生エースと笑顔の3年生エース。対照的な終末だったが、2年生エースは最後にこう口にした。
「バックを信頼して投げれば、しっかり抑えられることが分かりました」
この経験は、きっと秋以降に生きていくはずだ。
スターティングメンバー
【豊中】
6戸島悠輔
5笹倉佑介
7辻埜剛史=主将
8上田一良
3一宮寛太郎
2立原昌幸
9林佑典
4加藤雅崇
1佐藤滉祐
【生野工】
8狭間翔葵
6二瓶雄輔
4中尾柊
3横田茂=主将
5福田崚斗
7中村龍至
9辻智之
2竹川秀哉
1大田喜陽
(文=沢井史)