尽誠学園vs高松東
打てなくても点を取る
試合終了後、ベンチから引き上げてきた尽誠学園の岡嶋徳幸監督は開口一番、「しんどかった」と漏らした。
終盤から二転三転したゲーム。尽誠学園が劇的なサヨナラ勝ちを収めたが、指揮官の疲労はさすがに隠せないだろう。ただ、試合内容はきっぱりと「想定内」と明言した。
「苦しい試合になることは分かっていた。勝ち進んでいく上で仕方がないこと。相手チームを見て戦うのではなく、常に総力戦で挑むだけ」
そして「子どもたちがしっかりと地に足を付け、自分たちの野球ができたこと」を勝因に挙げた。
象徴するシーンが8回裏の尽誠学園の攻撃だ。高松東に逆転を許した直後の1点を追うケース。
6番追川勝也(3年)がフルカウントから四球を選んで出塁すると、相手投手のボークで二塁へ。すると後続の打者が落ち着いて2打席連続で犠打を決め、ノーヒットで同点のランナーの迫川を生還させた。
土壇場で追い詰められながらも焦ることなく、各人の仕事を完璧にこなした尽誠学園ナイン。最終回でサヨナラを呼び込む布石をしっかりと築いた。
ちなみに、この試合で尽誠学園は6本の犠打を成功させた。
インタビューの最後、自分たちの野球を「打てなくても点を取る」という言葉に置き換えた岡嶋監督。名門らしい、しぶとい野球で2007年以来となる夏の甲子園出場を狙う。
(文=和田雅幸)