試合レポート

大阪桐蔭vs千里

2012.07.15

これぞ、夏の戦い

「夏の戦いだから打たれるのは仕方がないと思います」

6月に大阪桐蔭のエース・藤浪晋太郎(3年)を取材したとき、こう話していたことを思い出す。
最後の戦いとなる夏の戦いは、どこのチームも死に物狂いで食らいついていく。秋や春の大会では何とか凌いできた場面でも、夏の大会となるとそうはいかない。
このゲームは、絶対に引き下がるまいとどこまでも食らいついた千里の気迫が光った戦いだった。

まずは1回。一死を取った後に、千里の2番大矢寛人(3年)に初球のやや甘く入った球をセンターに運ばれ二塁打を浴びた。
速球に臆せずに思い切り振り抜いた殊勲の一打に、球場内はドッと沸いた。千里の応援スタンドが一気に盛り上がるのを見て「自分たちは完全にアウエーでした」と藤浪は感じていた。

ただ、騒然とした雰囲気のマウンドでも藤浪は冷静だった。「打たれるのは仕方ない」とはいえ、春の選抜大会優勝投手のプライドもある。
「持っている球種をほとんど使った」と、多彩な変化球を投げ分け、4者連続を含む10奪三振(5回を終えて降板)で食い下がる千里打線を相手に堂々としたマウンドさばきを見せた。

味方打線は千里の変則気味な投手陣を前に苦しんだ。
「夏の大会は簡単に勝てないということをあらためて痛感した試合でした。こちらとしても打てるところで打てなかったり、細かいミスがあった。初戦ということで硬さもあったと思います」と振り返った西谷浩一監督。

毎回のように走者を送り出して何度も千里を追い詰めたが、千里の投手陣は低めにうまく打たせ、大阪桐蔭打線を爆発させなかった。
1回の2点は、併殺狙いのショートゴロが二塁への悪送球となり二者が生還したもの。それ以外は、内外野ともにしぶとく守り抜き、大阪桐蔭の残塁は12を数えた。


“あと1本”を許さず、春の王者に全力でぶつかった千里ナインに、球場では最後まで暖かい声援が送られていた。
千里の大矢主将は、「負けたのは悔しいが、自分たちはどんな試合になっても笑顔を忘れずにしようと言っていた。それはできたと思います」と保護者の前で胸を張り、「3年生は今日で(高校野球を)引退しますが、これから野球部を見守ってあげてください」と挨拶をした。
昨秋以降の現チームでは、公式戦で勝つという喜びを味わうことはできなかったが、それ以上に高校野球をやりきったという充実感にあふれた様子で球場を後にした。

勝った大阪桐蔭にしてみれば、不完全燃焼の夏のスタートとなったかもしれない。
初戦を戦うのは難しいともよく言われているように、今夏は全国的にも初戦で苦戦する実力校が多い。そんな中、最後まで主導権を渡さずに初戦を突破し、夏の頂へ向けての1歩目を踏みしめた。

「夏の初戦はやっぱりキツかったです。でも、こういう試合をものに出来たので、次はもっと冷静に戦えると思います」と水本弦主将は2回戦を見据えた。

スターティングメンバー
千里
4東亮太朗 
8大矢寛人  (主将)
7倭悠太
2河野隼士 
6林幸平 
5山野哲弥
9吉田航司
3川島育生
1橋口翔太

大阪桐蔭】 
2森友哉 
4大西友也
9水本弦  (主将)
3田端良基
7安井洸貴
5笠松悠哉
8白水健太
1藤浪晋太郎
6妻鹿聖

(文=沢井史)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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