試合レポート

都立小山台vs東京実

2012.07.08

この夏も見逃せない都立小山台

神宮第二の第1試合は都立の強豪・都立小山台と毎年4,5回戦へ進出する東京実との対決。実力的に均衡した両校が初戦での顔合わせする好カードとなった。

小山台は1回表から東京実の先発左腕・篠崎 健斗(3年)の立ち上がりを捉え、一死二塁から3番比嘉 海雄(3年)のセンター前タイムリーで1点を先制する。さらに3回表、小山台は1番赤川 秀汰(2年)の右中間を破る二塁打、2番広川の犠打で一死三塁として、再び3番比嘉がレフトへ犠牲フライを放ち、2点目を入れる。

 
4回裏、東京実は二死1,2塁から7番篠崎がライトオーバーへの二塁打で1点差に迫る。
 追加点を入れたい小山台は6回の表、二死1,2塁から 1番赤川が外角直球を捉え、レフトの頭を超える二塁打で、2点を追加し4対1。大きな追加点となった。ここで東京実・篠崎は降板する。

 追う東京実は8回裏、一死1,2塁のチャンスを作る。打者は7番三浦 凌(3年)。小山台バッテリーは焦らずに満塁策を選択。ストレートの四球で一死満塁。8番は7回からマウンドに上がる橋爪 康貴(2年)。橋爪はサードゴロ。サードは焦らず二塁へ送球し、一塁走者がアウト。三塁走者は生還し、4対2としたが、焦らずに一つのアウトを取ることを選択したのは正しい判断だ。東京実は9番に代打・江田博文(3年)が入る。165センチ85キロと横幅が大きく、下半身の太さが目につく如何にも長打力が期待出来る打者を代打に送った。小山台・大澤はテンポ良くストライクを取って、追い込んでいき、最後は切れのあるスライダーで内野ゴロに打ち取り、凌ぎ切った。

9回裏。東京実は最後の攻撃。9番木内航の代打・太山 翔太(2年)が振り逃げで出塁。1番佐藤 寿信(2年)のセンター前ヒットで無死1,2塁のチャンス。2番柿木がきっちりと犠打で送り、3番河原隆文(3年)。河原は初球に手を出し、投ゴロ。飛び出した三塁走者がアウトとなり、二死1,2塁。4番倉部は変化球に腰が泳ぎながらも喰らいつき、打球は二塁手の頭を超えセンター前へ。二塁走者が生還し、4対3の一点差に。しかし5番ハワジャ・アブドゥラ(3年)がレフトフライ飛に倒れ試合終了。小山台が東京実の反撃を凌ぎ、初戦突破を果たした。


 試合後、小山台・福島 正信監督は「苦しかったですね。何十年も監督をやっていますが、やはり公式戦は苦しいですね」と振り返った。小山台は試合の入りとしては理想的であった。1回に先制し、3回にも追加点を入れ、6回にも2点を追加。特に6回の追加点がなければ、試合展開は後攻めの東京実にとっては有利な展開になりかけていただけに大きな2点であった。今日は1番を打つ赤川が殊勲者といえるだろう。

 苦しい試合でも守り勝ち出来たのはエースの大澤の終始乱れぬ丁寧なピッチングがあったからだ。驚くような球速はなく、169センチ58キロと上背がない右腕だ。重心を深く沈め、右腕を内旋させ、左腕で壁を作って、リードする。身体の使い方が上手いため、細かな制球力を実現する。低め・内外角への投げ分けとスライダーの使い分けが上手く、東京実打線の狙い球を外す投球センスが光る。一つ一つアウトを積み重ねる事に徹し、大澤はピンチの場面でも慌てることはなかった。

 先行逃げ切りという形で接戦を制した都小山台は4回戦でシード校の東海大高輪台と対戦する可能性がある。先を見据えながらも、福島監督は「一戦一戦大事に戦っていきます」と今後の展望を述べてくれた。

 都立の雄・都立小山台。しっかりとゲームプランを組み立て、周到に進めていく好チームだ。東京実の攻略の仕方は事前に分析し、その弱点を見事に突いた攻撃であり、犠打、犠飛も失敗することなく、確実に遂行し、守りも内野手を中心に、鍛えられている様子が見られた。そして終始、アウトを積み重ねることに集中出来る冷静なバッテリー。この夏も私立に気後れすることなく、戦っていけるチームだと感じた。この夏も都立小山台の戦いぶりは見逃せない。

(文=編集部:河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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