明徳義塾vs鳴門
明徳義塾、春の四国王者に
明徳義塾、「腹八分目」で春の四国王者に!
表情を変えず挨拶に並び、淡々と校歌を歌い上げ、粛々と表彰式に臨む。
その光景は3年前、石橋良太(現:拓殖大3年)を主将・エースに押し立て優勝を果たした平成21年(2009年)第62回大会の優勝時と全く同じであった。
選抜大会ベスト8の鳴門が相手の決勝戦。
現在の四国地区の高校野球における頂上決戦にあっても、明徳義塾の選手たちに気負いは全くなかった。1回と3回に4番・西岡貴成(2年)が連続適時打を放つと、4回には今大会3連投となった小方聖稀(2年)が自らを助ける適時打。5回には最終的には4打数4安打をマークした3番・伊與田一起(3年)のレフトオーバー適時三塁打に続き、西岡も犠飛で続いて計5得点と、前半でほぼ試合を決めてしまったのである。
後半に入っても明徳義塾の勢いは変わらない。徳島ホークス(ヤングリーグ)出身の小方は「平行移動しながら投げる」と馬淵史郎監督からのアドバイスを体現し、7回途中まで94球、5安打4四死球で自責点1と試合を作った。
続く岸潤一郎(1年)は疲労から7回に1番・河野祐斗(2年)に適時打、8回に7番・松本高徳(2年)に犠飛を与えるも大きな崩れはなし。9回は福永智之(3年)が危なげなく試合を締めた。
一方の打線も生光学園中(ヤングリーグ)出身の西岡が7回に再び適時打を放ち、準決勝から8打数連続安打の偉業を達成。
「徳島県のチームには負けられない」と気持ちを力に変えた徳島県出身選手2人の活躍は、徳島ホークス時代は小方とバッテリーを組んだ鳴門5番・伊勢隼人(2年)をしても「昔の小方は打たれたら崩れていく奴だったが、今はまったく違う」と舌を巻かせるほどだった。
ただ、冒頭に述べたように明徳義塾の側に緩みはない。馬淵監督は大会を振り返り、こう話す。
「まだチームは未完成。打順もまだ決まっていないし。投手の数ができたのは良いことだけどね」。
そして3月の部長就任以来、公式戦9戦負けなしを続ける佐藤洋部長が試合後最初に話した言葉もこうであった。
「(9回・二塁ベース寄りの打球を2本安打にした)髙橋拓也(2年)の守備。杉原賢吾(3年)のリードやバント。高知県体育大会(5月19日~21日開催)へ向けて、いい課題ができました」。
そう、彼らのお腹はまだ「腹八分目」。最初の満腹感は甲子園出場の瞬間までとっておく覚悟だ。
(文=寺下友徳)