東海大高輪台vs国士舘
東海大高輪台・大口君が左中間二塁打で先制
タテジマ対決は持ち味の異なる投手の投げ合い、東海大高輪台が辛勝
タイプの異なる左右の両先発投手が、それぞれの持ち味を出した投手戦だった。
東海大高輪台の背番号10の井上君は右サイドスローで、シンカーのようにスーッと沈んでいくスライダーが武器。自分でも、どういう変化をしていくのか分からないというくらいで、ある程度は捕逸覚悟で投げているというから、そのキレ味のよさが窺える。
これに対して国士舘の左腕西川君は、184㎝87kgという恵まれた体格で、力感あふれるフォームから投じられる球も、ストレートは時にズドーンと捕手のミットを叩いている。制球さえ崩さなければ、それほど大崩れはしないのではないかという印象だった。
3回を終えて0―0の投手戦は、なかなか緊迫感のあるものだった。
均衡を破ったのは4回の東海大高輪台だった。先頭の2番渡辺諒君が中前打するとバントで二進。大口君が左中間やや浅めにいた外野の間を抜いていく二塁打で、これがタイムリーとなった。さらに内野ゴロで三塁へ進むと、暴投で生還した。これで、試合の主導権は東海大高輪台が握ることになった。
その裏、国士舘も三塁まで走者を進めたものの、あと一本が出なかった。井上君の独特のスライダーを打たされているという印象だった。それでも、国士舘も西川君が好投を続けて、その後の失点を許さなかった。そして、7回、1死三塁から6番大倉君の中犠飛で1点を返した。
しかし、東海大高輪台は8回からは思い切ってエースナンバーの佐藤洋君を投入。佐藤君は安打はされつつも2イニングを抑えて東海大高輪台が逃げ切って、まずは夏のシード権を獲得した。
東海大高輪台・井上君
東海大高輪台の宮嶌孝一監督は、
「井上がよく投げて試合を作ってくれたのが大きかったですね。当初から、ロースコアの試合になるだろうとは思っていましたから、こういうスコアになるのではないかと思っていました」と、井上君の好投を称えた。
さらに、「秋に4番を打っていた選手がケガでいなくて、代わりに大口を抜擢したのですが、いいところで打ってくれました。これが、自信になってもらえればと思います」と、投打の殊勲者を評価していた。
そんな宮嶌監督に、次の相手は春センバツでベスト4に進出した関東一ではなくなったということを告げたら、一瞬「えっ?」という表情になった。
「米澤さん(関東一監督)と、14日に神宮で戦いましょうと、約束してたんですけれどもね…」と、少し残念がっていた。
やはり、関東一に対してどれだけ戦えるのか、試してみたかったというのも本音だったのであろう。
国士舘の箕野豪監督は、「例年に比べると今年は打線の力がありませんから、こんな形の試合になってしまいますね。相手の先発投手はイキのいい球を投げていました。(持ち味である)機動力を生かしてということもあったのですが、相手もかなり警戒していましたから…。それに、投手戦でしたが、点の取られ方がよくありませんでした。流れを引き寄せられませんでした」と、完敗を認めざるを得ない状態だった。
夏へ向けての課題を見つけて、もう一度出直しを誓っていた。
(文=手束仁)