試合レポート

宇和島東vs川之石

2011.10.18

宇和島東vs川之石 | 高校野球ドットコム

宇和島東先発・宮本広大(2年)

謙虚に戦った宇和島東、13人川之石を下す!

秋季四国大会・愛媛県代表最後の切符を争った共に南予地区の2チーム、川之石宇和島東。結果的には8回コールドで宇和島東の勝利となったが、両者にはスコアほど大きな力の差は存在していなかった。

まずは敗れた川之石。二宮成夫監督は「打線が(バットを)振って振って先に仕掛けていくのが理想だったが、先に取られたことで(プランが)崩れてしまった」と初回の大量失点を悔いたが、この試合でも彼らは80キロ台のカーブと110キロ台のストレートを投げ分ける左腕・矢野公士(2年)と、120キロの直球とほぼ変らぬ球速で流れ落ちるスライダーに見るべきものがある右腕・塩﨑一弘(2年)を使い分ける継投策。加えて3回表に追撃のタイムリーを放っても気を抜かず本塁送球間に2塁を陥れ、次打者が相手失策で出塁する間に一気に2点目のホームを踏んだ2番ライト・阿部治貴(1年)の好走塁など随所に見せ場を作っていた。

わずか13人の選手であっても個々の特長を最大限に活かす試みを怠らず、今大会は今治東済美を下し、前日の準決勝でも今治西と接戦を演じて昨夏2回戦の再現すらも想起させ、この試合でも「賢い野球」の片鱗は示した川之石。冬の鍛錬次第では昨年・春の愛媛大会を選手17人で制し、四国大会でベスト4に入った野村のような大旋風を起こす可能性を秘めている。

しかしそれでも、勝者は前日の小松戦で延長11回・188球を投じたエース右腕・中川源和(2年)を温存した宇和島東であった。なぜなら、彼らは同地区で対戦し試合を見聞きする機会の多い川之石に対し、終始リスペクトを持ち、かつ謙虚に戦っていたからである。では、宇和島東・浅野秀夫監督の話に耳を傾けてみよう。


宇和島東vs川之石 | 高校野球ドットコム

守備タイムで集まる川之石内野陣

「正直、知った同士なのでお互いやりにくかったと思うんです。今日の試合は原田(裕輔・2年)の7打点に尽きるとは思うんですが、今日は低いボールに手を出さないことを指示する中で、2番の山下(竜一・1年)が初回に送りバントを決めてくれた。それも勝敗の分かれ目だったと思います。そして守備については、長打のない子に対してはかなり寄せて守りました」。

確かに彼らの1回裏は慎重すぎるほど慎重。先頭の坂井勇太(1年)は6球を投げさせフルカウントから三塁内野安打で出塁。山下が犠打で送り、山内省吾(2年)も中前打で1・3塁とし、イケイケとなるべき状況においても4番・岩森健一郎は1ボール2ストライクからボール球に手を出さず四球を選ぶ。そして「ストレートを待って」高校初本塁打をグランドスラムで飾った5番・原田も仕留めたのはフルカウントの6球目だった。こうして宇和島東は打者5人・計23球を費やし試合の主導権を奪取した。

宇和島東は返す刀で守備面でも重厚な戦いを見せる。これまでの数多くのスカウティングにより完全にインプットされた川之石各打者のデータ。

それをこの試合では守備位置や、「夏の修羅場を経て、味方にも謝る余裕が出てきた。今はほとんど任せている」(浅野監督)山内のリード、そして宮本広大(2年)の配球にアウトプットしたことで、彼らは「1つ1つアウトを取る」(岩森主将)コンセプトを体現し、地力に勝る側に「賢い野球」をされた川之石を最後は「打つ手なし」の状態にまで追い込んだのである。

かくして負ければ終わりの土壇場で満点に近い野球を発揮し、2年ぶり12度目となる秋季四国大会出場を決めた宇和島東。あとは四国大会でこの日見せた謙虚な試合運びに「投手が抑えているので、四国大会では打線で助けられるようにしたい」(岩森主将)盛り付けさえできれば、宇和島東の今大会第1シード「優勝候補本命」のメッキ看板は、晴れて「秋季四国大会優勝候補本命」の金看板へ掛け替えられることになるだろう。

(文=寺下友徳)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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