札幌第一vs北見商
金子優斗(北見商)
悪夢の立ち上がり
28年ぶりに全道大会に進出した北見商の戦いはわずか1時間20分で終わった。
誤算だったのはエース金子優斗(2年)の立ち上がり。札幌第一・先頭打者の近澤征樹(2年)に対する第1球こそカーブでストライクを取ったが、その後は思ったようにコントロールができない。
初めて経験する全道の雰囲気なのだろうか。「気にはならなかった」と本人は話したが、マウンド上の足場を掘るシーンが何度かあった。
フルカウントから近澤を歩かせると、送りバントを挟んで3連続四球。押し出しで先制点を献上してしまった。表情が厳しくなる金子。
ベンチで見守る小中政秀監督が「今までこんなに立ち上がりに四球を出したことはない」と驚くほど苦しんだ左腕は、さらに満塁から、6番斉藤慎次郎(2年)に対する初球が暴投になり2点目。斉藤には犠牲フライを浴びて3点目、そしてバックのミスも重なり無安打で4点を奪われてしまった。
「厳しいコースを突こうとした」と四球の原因を語った金子。4つの四球のうち3つは初球でストライクが取れていただけに、悔いの残る四球。知らず知らずのうちに、腕が振れなくもなっていた。
2回も先頭打者の9番村田皓大(2年)に対する死球から、相手打線に捕まり7失点。気がつけば、11対0となっていた。
「我を忘れているようで、(投球の)フォームが途中から変わった」と心配していた指揮官。捕手の山本晃作(1年)や、伝令の坂本孝太(2年)が何度かマウンドに駆け寄り、「思い切って腕を振れ」と励ます。
ようやく我を取り戻したのが3回。2つの三振を奪うなど、初めて三人で抑えた。
「打者のインコースを突けた」と、この場面が本来の投球だった金子。コールドで4イニングしか投げられなかったが、少しだけ自信をつけることはできたようだ。
「来年春にまた全道へ戻ってきたい」と前を向いた左腕。
経験したことがないような四球の連鎖。この意味を追求すること、同じような状況で何を考えるのかが今後の課題になるであろう。
(文=松倉雄太)