大阪桐蔭vs阿武野
大阪桐蔭 ホームランでも全力疾走
走れっ!
今夏の大阪大会準優勝の大阪桐蔭が秋季大会1回戦を戦い、18安打24得点で快勝スタート。西谷浩一監督は、「(台風で4日の)初戦が延びたが、その分しっかり練習ができて良いスタートがきれた」と振り返った。
公式戦初先発となった背番号10の澤田圭佑(2年)は、5回を投げて1失点したものの、被安打は1。エース藤浪晋太郎(2年)に出番を与えないほどのピッチングを見せた。
「調子(デキ)は良くなかったが、野手にサポートしてもらえた」と話した澤田。196センチのエースほどの角度はない分、低めを突く抜群の制球で終わってみれば無四球だった。
一方、打線で旧チームからの経験者は主将の水本弦と、4番の田端良基(ともに2年)の二人だけ。それでも二人が際立たないほどの攻撃で、ヒットの半分以上は長打だった。
そんな新チームの初戦で、一際目を引いた場面があった。
「走れっ!」
ベンチから声が飛ぶ。2回裏、このイニング2回目の打席に立った1番の森友哉(1年)がライトへ本塁打を放った時だ。
本来ならゆっくりダイヤモンドを一周できるはずの森は、全力疾走で本塁まで還ってきた。3回に投手である澤田に本塁打が出たときも同じ光景があった。もちろん主将の水本に一発が飛び出した時も。
夏の悔しさも糧とし、何かを徹底していきたいという姿勢がチーム全体に溢れ出ていた。
この日中国地方のあるチームが見学に訪れていたが、ここの選手たちも驚いていたほどの本塁打でも全力疾走。
大阪桐蔭 水本弦主将(外野守備で左投げに戻す)
この姿勢に刺激されたか、相手の阿武野も後半には「ダッシュ」という声が飛ぶようになった。前半、ファウルボールを控え選手が中々取りにいかず、球審から注意されていたのが嘘のように動きが良くなった阿武野のナイン。
両チームがこういった姿勢を見せだすと試合のリズムは格段に良くなった。
さて、この試合でもう一つ目を引いたのは大阪桐蔭の水本。
この日ライトで出場した水本は、右手にグラブをはめていた。つまり球を投げるのは左手である。右投げでセンターを守っていた夏までとは違う光景だ。
元々左投げの投手で、野手の時のみ右という両投げ登録だった水本。それがなぜ今回左に変えたのか。
西谷監督は「新チーム当初、内野で水本を使うつもりだったが、もう一つうまくいかなかった」と話した。外野に戻り練習を続けていた水本自身から申し出があったというのが8月中旬だそうだ。
「左でいきたいということでした」と指揮官は説明する。
元々の利き手である左の方がしっくりくるということなのだろうか。いろんな試行錯誤の中で決めたのだろう。左投げで守る彼のプレースタイルを今後も注目したい。
(文=松倉雄太)