牛深vs玉名工
佐藤祐太(玉名工)
負けない気持ち-。
負けない気持ち-。
野球はもとよりあらゆるスポーツや日常生活においてもよく耳にするこの言葉。全面的に強気を表現することがあれば、内に秘めた闘志で黙々と戦うものもいる。
今大会、最初の2回戦となった牛深vs玉名工の一戦は、互いに一歩も譲らない延長15回引き分けとなった。
玉名工・佐藤祐太、牛深・中村忠義。ともに旧チームからマウンド経験があり、内に秘めた闘志で黙々と投げ込むタイプの二人が壮絶な投げ合いを演じてくれた。
この日、最速140キロをマークし、常時130キロ中盤のストレートを投げ込んでいた玉名工・佐藤に対して牛深の中村忠は双子の兄・俊貴との抜群のコンビネーションを形成し、キレある球をコーナーに投げ分けるなど、ともに自らの持ち味をふんだんに発揮した。
試合は、3回に3番・高西侯弐の左前適時打で先制した玉名工に対して、牛深は7回に8番・平田泰成の右前適時打で同点。さらに延長に入った直後の10回、牛深は2死二塁から4番・中村俊が右前適時打を放ち、決着がついたかに思われた。しかし、その裏に玉名工が2死三塁から2番・城戸雄太が遊撃手強襲の内野安打を放ち、試合は振り出しになり、そのまま両者譲らず延長15回を終えた。
ここぞというところで守って、そして攻めてと玉名工の笹本監督と牛深の中島監督が、それぞれ選手の持ち味をふんだんに引き出し、互いに粘り強さを発揮した好ゲームだった。
中村忠義(牛深)
牛深の中島健太郎監督は「守備がよかったですね。この時期に15回を戦ってエラー1なんて、うちにとっては上出来です。それと中村(忠)は夏の敗戦(4-5天草工)をバネにこの短期間で、ずいぶんと成長しました」。
一方、玉名工の笹本和裕監督も牛深の中島監督と同様にエースの成長に目を細めた。
「佐藤は今までで一番多い球数を投げました。もともと自立心のある子ですが、今夏のサヨナラ負け(0-1ルーテル学院)、さらに新チーム結成後初の公式戦である城北地区大会で延長10回(2-3城北)の負けで、さらに強くなりましたね」。
この日、試合のあった[stadium]藤崎台県営野球場[/stadium]で、奇しくも両校は今夏の同じ日(7月16日)に1点差で敗れている。しかも、その敗戦投手がこの試合で15回を投げ抜いた二人の投手であった。
それだけに玉名工・佐藤が182球、牛深の中村忠が194球という魂のこもった投球には、今夏の悔しさを同じマウンドで晴らすんだといった熱い思いがあったに違いない。
ともに延長15回を投げ抜き、相手打線を被安打8に抑えるという文字通り投手戦の中、互いに内に秘めた闘志を切らさなかったことが、この壮絶な戦いを演じた両校の大きな要因でもあっただろう。
負けない気持ち-。
そんなことを改めて考えさせてくれるような延長15回引き分けだった。
(文=編集部:アストロ)