試合レポート

東海大相模vs日大藤沢

2011.09.12

東海大相模vs日大藤沢 | 高校野球ドットコム

先発、池田(日大藤沢)

今年は粘り強く東海大相模 夏へ向けて課題と収穫を残した日大藤沢

 神奈川県大会は10日から開幕。
二日目は2回戦屈指の好カードが実現した。東海大相模日大藤沢
昨年の主力がごっそりと抜けて、経験値が少ない東海大相模
一方で日大藤沢はこの夏に慶応義塾を破る立役者となった左腕の池田が残った。慶応義塾打線を封じたスクリュー。真っ向から振り下す本格派で、角度のある直球と切れのあるスライダー、カーブを投げ分ける。キレの良い変化球を持つ左投手が有利な秋季大会にとってスクリューという武器を持っている池田の存在は大きく、期待感を持って臨む。

試合は3回まで両チーム無得点。立ち上がりは日大藤沢の山本監督が想定した試合展開となった。
打者は東海大相模の先発・庄司の変化球を見極めるために初球から手を出さずにじっくりとボールを待ちながら攻略法を絞っていく。先発の池田は慎重に攻めていき、3回まで無得点に抑える。

日大藤沢は打者が一巡した4回表にチャンスを作る。3番小坂井が死球、4番金子が四球で無死1,2塁のチャンス。だが5番阿部がバントをして打ち上げた打球が前進したファーストの三井へ正面。一塁ランナーが戻りきれずに併殺。あっという間に二死になる。
救いは二塁のランナーが残ったことか。得点圏にランナーが残ったことが次に活きる。6番長田が右前ヒット。二塁走者の小坂井が三塁を蹴ってホームイン。日大藤沢が先制する。

だが東海大相模も少しずつ池田を捉え始める。3番森下が高めの直球を捉え、右中間を破る長打。森下は一気に三塁を狙う。悠々と三塁打と思えたが、森下は中継のもたつきを見てホームへ。クロスプレーとなったが、タッチアウト。アウトになった事で結果として、森下の暴走となり、4回は無得点だったが、反撃できる可能性が出てきた。


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4安打と大活躍した森下(東海大相模)

5回裏、一死から7番櫛山は中前安打で出塁。8番廣戸がレフト線を破る二塁打で一死2,3塁のチャンスを作り、9番庄司。庄司は1-1からのスライダーを引っ張り右前ヒット。まずこれで同点。ライトの小坂井がバックホームで力強い返球を還ってきたが、捕手の小室が捕球することができなかった。カバーに入っていた池田も捕球できずにその間に廣戸も生還し、東海大相模が2対1と逆転する。
さらに5番磯網も右前安打で二死1,2塁となって先ほどランニングホームランを狙って憤死した森下を迎えた。

池田は決め球のスクリューを2球続ける。森下は見送り、0-2となって高めに浮いた直球を逃さなかった。打球は右中間を破る三塁打となり、東海大相模が4対1と突き放す。森下は3打数3安打の活躍。打球は全て右方向だ。森下は池田の攻略法を明かしてくれた。

「昨夜に監督さん(門馬監督)に沈むスクリューは全て捨てて、高めに浮いた球を逃さず、右方向に打ち返せという指示がありました」
森下はスクリューに手を出さず、高めに浮いた直球を逃さずに打ち返した。それも右方向に。

森下だけではなく、右打者の多くは右方向へ打ち返していた。門馬監督の指示はレギュラー全員に伝わり徹底されている様子が伝わった。

以降は試合を優位に進めていき、東海大相模は7回に森下の中越えの二塁打で1点。なんと森下は4打数4安打。右前安打、右三塁打、右三塁打、中二塁打。つまり本塁憤死となった第2打席の三塁打がセーフとなっていれば、サイクルヒットになっていただけに惜しい内容だった。
8回裏にも1点を加えて6対1に。
9回表、日大藤沢は8番吉澤の二塁打で1点を返すものの、反撃はここまで。東海大相模が3回戦に進出した。


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盛り上がる日大藤沢ベンチ

今年の東海大相模は去年のような迫力はない。去年の東海大相模の合言葉は「アグレッシブ・ベースボール」。
核弾頭の渡辺が突破口を切り開き、臼田がヒットエンドランでチャンスを拡げる。バントを一切しない。超攻撃的なスタイルで勝ち上がっていたが、今年はバントを絡める。去年のずば抜けた打撃力と走力を持った選手が少ない新チームではバントを絡めた攻撃が得点する上で効率的かもしれない。

森下は「今年の相模は粘り強くやります」と述べたように、粘り強く戦いながら勝利を目指すスタイルになりそうだ。
「まだこのチームは弱い。秋は時間をかけたらかけるほど強くなる」と門馬監督が語る。
選抜優勝を決めたナインの新チームはもつれる試合は多かったが、経験を積み重ねるほど強さが増していき、選抜では驚くほどの成長は見せていた。今の彼らにとって真剣な公式戦を如何に多く積めるかが成長のきっかけになる。今後も厳しい戦いが続くが、プラスと捉えて強い相模に作り上げていくことを期待したい。

日大藤沢の山本監督は「やはり相模さんは強かったです」と脱帽。課題として捕手育成を掲げた。
日大藤沢は山本監督が就任して以来、好捕手を育て上げるチームだ。黒羽根(横浜)、川辺(明大)、島仲貴寛(三菱自動車岡崎)とハイレベルな捕手を育て上げ、捕手を中心として手堅いチームを作り上げていた。

しかし今年は捕手の力量不足を痛感しているようで、今日マスクをかぶった小室が頼りになる捕手になるには時間がかかる印象を受けた。5回の裏のワンプレーでは小室が後ろに逸らし、逆転だけではなく、打者走者の進塁も許してしまった。

山本監督はワンプレーだけではなく、小室の全体のプレーを指摘した。
「ホームを諦め、次の進塁を許さないプレーをするべきです。まだ小室は目の前のプレーで一生懸命になっている。まだ先を見据えたプレーが出来ていない。また同じ打者に同じように打たれてしまった。スローイング、リード、プレーから技術と意識が物足りない。大会を終えてから、しっかりと教え込んでいきたいですね」

一方で収穫はあった。この試合は2点止まりだったが、三振が少なく、打撃が出来ていた選手が多かったことを収穫に挙げた。結果ではなく、先を見据えればこれほど振れて、当てることができれば夏までに打線を仕上げられる自信はある様子であった。

日大藤沢ナインが山本監督の青写真を描くチームが実現すれば甲子園を狙う強豪校を脅かすことになるだろう。
強くなった東海大相模日大藤沢が再戦することを願っている。

(文=編集部:河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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