試合レポート

今治工vs丹原

2011.09.14

今治工vs丹原 | 高校野球ドットコム

サヨナラ勝ちに歓喜の今治工ナイン

「好ゲーム」を呼び込んだ「好テンポ」

レフト前へ飛んだ打球を見やり、2者の生還を見た後に満面の笑みで挨拶に並ぶ今治工・青陽唯斗(2年)。その横でがっくりとうなだれる丹原左腕・小笠原嵩(1年)。実に劇的な形で決着がついたこのカードであったが、意外にも試合時間はわずか1時間53分であった。

その要因は2つある。1つは今治工業の代名詞になっている「全力疾走」だ。攻守交替時はもちろん、凡打に終わってもベンチまでの全力疾走を怠らない彼ら。「最後にああいう形(逆転サヨナラ)になったのは選手たちがあきらめなかったからだし、先発の伊藤(銀次・1年)も大崩れせず、低め低めに投げてくれた」と、村上満雄監督は主に精神面を勝因としてあげたが、そんなチームを支えているのは自分たちのペースに相手を巻き込む「全力疾走」に他ならない。

もう1つは丹原の「対抗力」である。「けん制死の直後に先制点を与えてリズムが悪かったが、その後はどっしり構えていけた」と菅哲也監督も語ったように、彼らは今治工のハイペースにまずは守備で対抗。

そしてワンチャンスを活かし4番・一色快斗(2年)の適時打などによる6回表の逆転で、一度は自分たちの側にペースを取り戻すことにも成功した。

また、この夏に公式戦初先発で第2シード川之江を破る好投を演じながら、新チーム結成後は脇腹痛で出遅れていた小笠原嵩も、バランスと腕のしなりが伴った伸びのあるボールを再三披露。最後は冒頭の通り力尽きる形になったが、「いいピッチングだった」と評した指揮官の言葉にもあるように、将来性を十分感じさせる投球を見せてくれた。

大局的に見れば地区予選の1回戦である。ただしその一方で、この夏の甲子園を見てもわかるように、スピード、テンポアップなくして全国で戦えないことはもはや自明の理であろう。2007年夏の今治西ベスト8以来、甲子園での2勝目が遠い愛媛県勢であるが、その打開策は「好テンポ」が生んだ「好ゲーム」の中に散りばめられているはずだ。

(文=寺下友徳)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!