試合レポート

智辯学園vs鶴岡東

2011.08.13

堂々の全国デビュー

 楽しみにしていた投手が全国デビューを果たした。その名は智弁学園の青山 大紀
彼は1年の夏から評判であった。投手としては最速144キロを計測。速球の速さだけではなく、変化球も器用に操り、完成度の高さがずば抜けていた。
また野手としても抜群のバットコントロールに美しいベースランニング。
投走攻守にずば抜けていた逸材だった。
それだけに全国の舞台で見たいと思わせる一人であった。それは今年の夏に実現した。青山擁する智弁学園のは圧倒的な力を示して甲子園に臨んだのだ。

一方で山形代表の鶴岡東山形中央を下し30年ぶりの出場。木口 奨を中心とした強力打線が売りだ。

 先発のマウンドに上がった青山。
いきなり全国の洗礼を浴びる形となる。1番の神田浩に2球目のストレートを振り抜かれ、打球は右中間を破るツーベース。いきなりピンチを迎える。初の全国の舞台ということで硬さがあったのだろう。やや立ち投げ気味で上体が高く、ストレートが低めに集まらなかった。3番木口 奨に最速146キロを連発していたが、ストレートが高めに浮く傾向は変わりなく、不安を覚えた投球であった。
鶴岡東打線の打力は予想以上であった。青山のストレートには全く振り負けることはない。次々と鋭い打球を飛ばしていた。

一方で打撃は鶴岡東のエース佐藤亮太の投球に苦しむ。佐藤はモデルチェンジをして台頭した投手だ。
入学当初、球速はあったものの、コントロールは苦しんでいた。コントロールを付けて打者を勝負するために取り組んだのがフォーム改造であった。
テークバックをぎりぎりまで隠してそこから振り出していく投球フォーム。球速は125キロ前後と遅いものの、出所が見難いため差し込まれやすい。
奈良大会で10本塁打を打った智弁学園の打線を次々と手玉に取っていく。打者を打ち取るのはスピードとキレの良い変化球だけではないことを証明した投球であった。
投手の矜持であるストレートの球速を落とす作業はつらいものがあったと思うが、本人の努力は甲子園という舞台で実った。


予想以上の打撃。
予想以上の好投。

そして甲子園緒戦という硬さ。様々な要素が絡み合って智弁学園は本来のプレーができていなかった。
しかし、その中で青山は徐々に余裕がでてきた。
140キロ台のストレートにカーブ、スライダー、ツーシームを投げ分けていく投球。初舞台にもかかわらず自分のペースで自分の投球が出来ていた。
そして均衡した試合を打ち破ったのも青山からであった。ワンアウト二塁からレフト前へしぶとく落ちるポテンヒットで先制する。二死二塁となって5番中道のライト前タイムリーで1点を追加する。

青山は尻上がりに調子上げていき、ストレートもコーナーに決まるようになった。そうなれば、序盤と同じ140キロ台でもキレ・コントロールが違う。
ようやく彼本来の投球ができるようになった。9回の表は二死から二塁打を打たれ、同点のピンチを迎えながらも最後の打者を打ち取りゲームセット。
初戦突破を果たした。

智弁学園のの選手たちに硬さが見えていて本来のプレーができていなかった。青山はそのままではいけないということで声をかけていったという。
ただ投げるだけではなく、周りが見えている投手だ。それは投球にしっかりと表れている。
甲子園は初舞台にも関わらず自分のペースで投げ続けることができるメンタルの強さは素晴らしい。
そして次のことを考えてフォークを一球も投げなかったと話す。
甲子園の初舞台で次の試合を見据えながら試合を組み立てることができるセンス。
1年夏から評判だった逸材が堂々の甲子園デビューを果たした。

(文=河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!