作新学院vs福井商
強打の作新学院
驚かされた。
次々と鋭い打球が右、左へ抜けていく。
気づいたらスコアボードには、11-1と点差の開いた数字が刻まれていた。
大会3日目の第1試合は、夏の甲子園に2年ぶりの出場となった作新学院(栃木)と、2年連続出場の福井商業の対決。
福井商業の先発は、エースの山本 文矢。
185センチ76キロと均整の取れた体格で、軸足にしっかりと体重を乗せていき、一気に振り下ろしていく右のオーバーハンド。そのフォームに癖がなく、筋の良さを感じさせる。ストレートも常時135キロ前後を計測し、スライダー、カーブ、フォークを操る好投手だった。これまでの結果やピッチングスタイルからみても、簡単には打たれない印象を受けていたが、その予想はもろとも崩された。
序盤から山本に作新学院打線が襲い掛かる。
1回表、一死から2番板崎がカウント2-2からのスライダーを上手く引き付けて、センター前へ飛ばしていく。そして、3番佐藤竜がカウント1-1からカーブを引き付けてフルスイング。振り抜いた打球は、あっという間にライトスタンドへ飛び込む先制ホームランとなった。先発の山本は、いきなり出鼻をくじかれる形となった。
主力打者の一発によって楽になったのか、作新学院はさらに山本に襲い掛かる。
4番飯野は四球。5番内藤は外角直球を引き付けて、左中間を破る二塁打。6番山下はスライダーを引き付けてセンター前ヒット。7番鶴田は四球で歩いて、8番大谷はセンターへの犠牲フライで、4対0。
二死1、3塁で、9番高嶋翔馬がレフト前ヒットと、なんと初回に6点を挙げた。
本来、山本はここまで連打を浴びるほどの投手ではない。確かに、この日は甘いコースへの投球も散見されたが、作新学院の打撃力が山本の力を上回っていたのだ。
その後も打線の勢いは止まらず、14安打9得点を記録。作新学院の打撃が、全国クラスであることを証明した試合であった。
作新学院のバッターは、完成度が高かった。どの選手も腰がどっしりと据わって、ボールを待つ体勢ができている。そして、ボールを手元まで引き付けてコンパクトなスイング軌道でボールを叩くことができていた。
そのためストレートだけではなく、変化球も引きつけて打ち返すことができ、また低めのストレートを左中間へ運んだ選手もいた。
もともと、作新学院は守備のチーム。
投手を中心とした「守り勝つ野球」をするチームである。この日も、先発投手・大谷が好投。バックも安定した守りを見せ、終始自分たちのペースで試合を進めていった。
そして、これまで足りなかった打撃面を徹底的に強化し、好投手も打ち崩せる破壊力のある打線に成長を遂げた。
38年ぶりの勝利を挙げた作新学院。迎え撃つは、最速152キロ右腕・北方悠誠を擁する唐津商業だ。
小針監督の「うちはチャレンジャーですので、積極的な姿勢で戦っていきたいと思います」という言葉通り、2回戦も積極的な打撃で今大会屈指の剛腕を打ち崩していく。
(文=河嶋宗一)