明徳義塾vs北海

プレッシャーに負けた

　高知代表の明徳義塾と今春選抜ベスト8入りした北海との対決。
お互い地力があり、そして強豪校らしく手堅い野球を展開するチームであり、のため接戦が予想された。

　試合はまず3回の裏、明徳義塾の北川倫太郎が外角直球を押し込んで左中間へ本塁打を放ち、先制する。
馬渕監督は「彼にはインコースの甘い球はこないから外に踏み込んで、左中間へ引っ張れ」と指示。とはいえ、並の高校生の指示ではない。高校生トップクラスのスイングスピード、打撃技術を誇る北川倫太郎にして初めてできる指示である。
結果、外の直球が甘く入ったとはいえ、コンパクトなスイング軌道で捉えて、強靭なリストで押し込んで、スタンドイン。打球が失速せずに左中間に運べる高校生は中々いない。緻密な野球を展開する明徳義塾ではなかなか見られない「個人技」を見せてくれた一本だ瞬間であった。

だがこのまま終わらないのが北海。
4回の表には二死から銭谷のタイムリーで同点。さらに5回の表には川越のタイムリーで勝ち越しに成功する。

大事な5回の裏、ワンアウトを奪って4番北川倫太郎。玉熊は厳しいコースへ執拗に厳しく攻めていくが、ワンバウンド気味だった直球が足に当たり死球。さらに先田にも死球を出してしまい一死1，2塁のチャンスを迎えて6番の杉原。速球を振りぬき、打球はライト前へ転がるヒット。ライトの川越はバックホームし、ダイレクトで届く好返球を見せながら北川が懸命に走り、セーフ。同点に追いつく。実に上手い走塁を見せた北川。無駄のない走塁が出来るところに明徳義塾の走塁の徹底振りがうかがえる。

その後は尾松 義生と玉熊 将一の粘り強い投げあい。
尾松は130キロ前後の速球に100キロ台のカーブを混ぜ、スピード差をつけた投球で北海の打者から凡打の山を築き、玉熊も本来の細かな制球力を取り戻し、明徳義塾打線を抑えていく。
そして9回の攻防。北海は一死から8番玉木が中前打。9番玉熊が確実に送り、二死二塁で1番石川を迎えたが、石川は空振り三振。尾松はエースとして粘り強く投げきり、仲間の反撃サヨナラを待つ。

9回の裏、先頭の中平は空振り三振。4番北川とは勝負を避けたのか、ストレートの四球で出塁する。5番先田が着実に送り、二死二塁でここまで２安打を打っている杉原。杉原は痛烈なショートゴロ。これを森貴弘が弾き、エラーで二死1，2塁とピンチを広げる。さらに7番梅田翼には死球を出してしまい、二死満塁。打者はエースの尾松にまわった。直球を振りぬいた尾松はライト前ヒット。これがサヨナラ打となり、明徳義塾がサヨナラ安打で二回戦進出を決めた。

　
明徳義塾打線が玉熊を追い込んだ。
「明徳義塾は１番から９番まで、事前に分かってたけど、それ以上の打線でした。長打もありながら、鋭く振り抜く力がある。」
と振り返るとおり、明徳義塾の強打線は玉熊を追い込んだみ、普段の心理状態で投げさせなかったところに勝因はある。5回の裏に北川倫太郎の死球を出したところから続けて死球を出して適時打を許したり、最終回でこの北川倫太郎を勝負しなかったのは作戦ということもあるが、逃げが見えた投球であった。

一方で、点差としては1点差とぎりぎりな戦いではあったがるが、接戦になってもどっしりとした試合運びができていた明徳義塾は改めて全国の強豪であると印象付けるものだった。次は名門・習志野との対戦。2001年夏以来の対決となる。

(文＝河嶋宗一)