金沢vs伊勢工
金沢・釜田が完封勝利!
最速152キロ右腕・釜田佳直が大会初日に登場した。
昨秋は、150キロ台を計測しながらも簡単にバットに当てられる場面もあったが、冬に打たれにくいストレートにするためにフォーム改良に取り組んだ。
冬を越した釜田のピッチングには溜めが生まれ、鋭く腕が振れるフォームに変貌した。結果、ストレートの伸びが増し、打者もそのスピードと力強さに圧倒された。
しかし、課題も残した。センバツの初戦・加古川北戦では5回途中まで、ノーヒットピッチングを演じながらも、ヒットを打たれたところから投球のリズムを崩し、終盤に打ち込まれて敗退した。
ランナーがいない場面では、自分の本来のリズムで投げることができたが、ランナーが出始めてから動揺が見え、球速がガタッと落ちて打ち込まれる悪循環にハマった。さらに捻転が大きいフォームのため、クイックも1.1秒から1.3秒~1.4秒前後に遅くなり、「対ランナー」の対応力に課題を残した。
そしてもう一つ。フォームを変えたことで打ち辛さは増したものの、反動が大きいフォームのためスタミナの消耗の激しく、一試合通しての安定できないという課題を残した。
その釜田も、持ち前の探究心で「投手力」を磨き、浅井監督からも「本物の投手になった」と言われるほどに、この夏は大きな成長をみせた。
この日の伊勢工戦は、初戦ということもあって序盤は力みがあった。ストレートは常時145キロ~150キロ前後は計測しているが、高めに抜ける場面が目立った。だが、ストレートが抜けていても変化球で試合を作ることができるのが、釜田が春から成長した点だろう。右打者にはスライダー、カットボール。左打者にはツーシーム、縦のスライダーと、変化球のコントロールも安定し、三振を積み重ねた。
終盤になってからは力みが抜け、140キロ台後半のストレートが決まり始めた。初回から140キロ台後半を投げ続けてバテた加古川北戦と違って、球速を抑えつつ、要所で140キロ台後半のストレートを投げていく。スタミナ配分を意識した投球で、終盤になっても余力をみせ150キロ台をマーク。ランナーが出てからも焦ることなく、安定した投球をみせた。そして、もう一つの課題であったクイックも、1.3秒前後から1.1秒にまで縮めた釜田。
試合後、「ピンチを抑えてからがテーマだった」と口にした。この試合も、再三にわたってピンチを迎えたが、自分のピッチングを続け、終わってみれば9回無失点の完封勝利。
向上心の高さから、一つ一つの課題を克服している釜田佳直は、さらに語気を強めこう宣言した。
「目標は日本一の投手になることです」
次の相手は緒戦の日南学園戦で16奪三振を奪った歳内宏明との投げ合いだ。高みを目指す二人の怪腕が甲子園を震撼させる。
(文=河嶋宗一)