阿南工vs城ノ内
5打数3安打3打点
の阿南工1番・飯尾拓也(3年)
レギュラーを外されてみえたもの
強打の阿南工が大会では2年ぶりとなる毎回19安打に加え、出場した10人全員が安打を記録する快挙を達成。5回には先発左腕・赤坂拓郎(3年)が足をつるアクシデントで5点を失い、最終回も2番手右腕・埴淵大樹(2年)が無死満塁のピンチを招いたものの、なんとか3失点にしのいで逃げ切った。
一方の城ノ内は持ち前の高い集中力で2度のビッグイニングを作っただけに、先発・井上宝(2年)が招いた序盤の大量失点が返す返す悔やまれる展開となった。
■ピックアップコラム
3回裏に満塁走者一掃の2塁打を放つなど5打数3安打3打点。阿南工1番・飯尾拓也(3年)は試合を決める活躍を見せた。しかし彼の背負う番号は「15」。下位打線からともかく実力者の1番が付ける番号ではない。その理由は試合後、当人によって明らかにされた。
「夏前に調子が悪くてレギュラーを外されていたので…打ててよかったです」(飯尾)。
村瀬義夫監督も「元気印」と認める思い切りよいプレーが持ち味ながら、その一方でプレーにムラがあるのが難点だった飯尾。そこで指揮官はあえて彼をレギュラーから外すことで「発奮してどう返ってくるのか」を観察していたのである。
そして「悔しかったし、レギュラーに戻りたかったので毎日居残り練習をするようにした」飯尾の変わろうとする姿をしっかりと認め、この日晴れて1番に起用した村瀬監督。気持ちと気持ちがつながった最高の結果は、チームに乱戦を勝ち抜く術を与え、飯尾自身にも「コンパクトにつなぐ」新たな考えの引き出しを与えた。
「サード守備では足を動かしていきたいし、バッティングでもセンターから右方向を狙っていきたい」と、今後の抱負を語った飯尾。その真摯な姿勢とまなざしを見る限り、指揮官が望んだ効果は大いにあったようである。
(文=寺下友徳)