阿波vs鳴門第一
三浦大地
4番が選んだ「ナイス四球」。阿波、開幕戦を接戦の末制す!
試合は両者の意地が真っ向からぶつかり合う好勝負に。鳴門第一は4番・林侑樹(3年)の先制2点2塁打などで5回までに4対2とリードを奪う。が、阿波も6回には1点、7回には7番・鳴川征志(2年)の2点タイムリーなどで3点を奪い一気に逆転。
その後阿波は8回裏、一度は同点に追いつかれたものの、最後は8番・三浦大地(3年)の左中間3塁打がタイムリーとなり、鳴門工との合併統合で「最後の夏」となった鳴門第一の気迫を際どく下した。エース右腕・森野貴大は要所でチェンジアップ、スライダーが有効に決まり140球の完投勝利。
■ピックアップコラム
両者とも「一年間の総決算」をグラウンドいっぱいに体現した開幕戦。勝った阿波は旧チームの売りだった「長打力」から一転、9安打のうち長打は3本のみ。
初戦で敗れた春季大会以後取り組んだ「自分の打順が来たら自分の仕事をして、つないで得点をとっていく」(馬場潤一郎監督)スタイル転換は、この試合において完璧に徹底されていた。
一方の鳴門第一も随所に集中力欠如が見られた総体協賛ブロック大会・城ノ内戦での敗戦を踏まえ、「実戦の緊張感をもって行った」(鎌田智仁監督)成果をノーエラーで表現。勝利の女神がどちらに軍配を上げるかに窮したのも十分うなずける試合展開であった。
松浦康司(鳴門第一)
このように拮抗した中。勝敗を分けたポイントは7回表・阿波の攻撃。3番・佐野友亮(3年)が初球ヒットエンドランを決め藤原直樹(3年)を迎えた無死1・3塁の場面である。
通常であれば4番として、そして主将として打ち気にはやる状況。ただし「序盤はみんな緊張していたが、5回・グラウンド整備の後に流れが来るのを感じていた」藤原は、「次の打者につなぐのに必死で、そのことしか考えていなかった」と語るように、全く自分一人で決める意識はもっていなかったのである。
ひたすら鳴門第一先発・松浦康司(3年)の気迫に立ち向かい、3球連続ファウルで迎えた11球目でついに四球を奪い取った藤原。その瞬間、満塁に沸き返る阿波ベンチとマウンド上で根負けの表情を見せた松浦のコントラストは直後、粘り強く投げ続けた森野貴大の同点タイムリー、そして鳴川の2点タイムリーにつながった。
試合後、「向こうは気持ちが出ていたが、うちもよく我慢した」と選手たちを讃えた阿波・馬場監督。その中でも藤原の「ナイス四球」はチームを一丸にするに最上級の「我慢」であったに違いない。
(文=編集部)