試合レポート

都立府中工vs都立鷺宮

2011.07.11

都立府中工vs都立鷺宮 | 高校野球ドットコム

土方凌(府中工)

最後の夏で現れた土方 凌という男

2試合目は都立府中工業―都立鷺宮と都立対決である。
試合は初回から府中工業の打線が爆発する。4番山崎の適時打、8番土方(ひじかた)の適時打などで一気に6点を入れ、さらに2回にも土方の走者一掃のスリーベースで一気に4点を入れて、さらに3回にも5点を加えて15対0と突き放す。
投げてはエースの土方が4回を投げて無安打10奪三振を奪う快投。5回の表、土方に変わって二番手の磯谷が締めてゲームセット。5回コールドで圧勝した。

府中工業の井上監督は「ここまで点を取るとは思いませんでした」と15点を入れたことに驚きの様子。
だが「大量得点を入れた試合の次の試合はたいがい点が入らないんですね。次の試合まで引き締めたいと思います」と次の試合に見据えていた。
また5回。4回までノーヒットの土方からに代えた。この起用については。

「個人記録よりも、チームの勝利です。夏勝つためには土方だけではなく、他の投手も登板させなければなりません」と説明した。
二回戦は都立三鷹帝京大高の勝者と対戦する。

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最後の夏に逸材が現れた。その名は土方凌(左・左 178センチ71キロ)。
伊藤拓郎帝京)、吉永健太朗日大三)、吉本祥二足立学園)と右の好投手が評判になっているが、左の好投手は少ない。
ましてやプロが食指を伸ばしたくなるスケールのある左腕は皆無。マックス143キロを計測し、そして大会直前の練習試合で日大三戦に5回まで無失点に抑える好投をしたという情報を聞き、評判だけならば都内で将来的にプロ入りが期待できる可能性を持ったサウスポーは彼のみ。チェックを入れなければならない逸材であると思っていた。

セットポジションから入り豪快に足を上げて、ややインステップ気味に強烈に踏み込み。腕を力強く振りぬく投球フォーム。垢抜けた感じはせず、やや上体の力が強く見える投げ方だが、彼の個性が活きた投球フォームだ。
表情は実に負けん気が強く、本人曰く「どんな打者でも気持ちで負けないように向かっていく気持ちを大事にしています」


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土方凌(府中工)

ストレートは135キロ前後(マックス139キロ)を計測した。135キロ前後だが、中々の勢いがある。綺麗なストレートではなく、若干シュート回転がかかった汚いストレートだ。
スピードは平均的でも、高校生左腕としては高いレベルに到達している。

もうひとつの武器はスライダーだ。土方が独自で編み出したスライダー。その軌道はカーブのような落ち方をするスライダー。
打者の手元で変化するハイレベルなスライダーであり、キレが良すぎて捕手が捕れなかったこともあったという。スライダーのキレは今年見た高校生左腕では一番だ。

この試合を振り返ると初回は1奪三振。2回は振り逃げを含む4奪三振。3回にも三振ラッシュは続き、2回もあわせて六者連続三振を記録。
さらに4回はアウトをすべて三振に取り、10奪三振を奪う快投を見せた。4イニング10奪三振という結果に土方は「まさかこんなに取れるとは……」と驚きの様子。三振は狙っていないという。

「投手である以上、三振が奪えることは気持ち良いです。ですが、勝つことが大事なので打たせて取ることを意識しています」
確かにがむしゃらに三振を奪うことはなく、テンポよく速球、変化球を投げ分けることができていた。

では今日の反省を問うと
「またボールにばらつきが多かったことです。三振をたくさん奪いましたが、その分、球数も多くなりますし、連投を考えたら少ない球数を打ち取れるようにしたい」と三振によって球数が多くなることを自覚していた。ちなみに打っても3安打6打点の活躍。スクエアスタンスから構えてシャープなスイングを見せる打者であるということも付け加えておきたい。

中学時代は立川ポニー所属。全国大会の出場経験もある左腕だが、入学当初は120キロ台前後。
徹底とした下半身強化により最速143キロまでスピードアップ。決め球のスライダーを身につけ、急成長を遂げた。

土方に「高校で入学した時に、今のレベルまで到達すると予想できた?」と聞いてみた。
すると土方は「とても想像できませんでした。自分でも驚いています」と自身の成長振りに驚きの様子であった。

卒業後は上のレベルで野球を続けたいという気持ちが芽生えてきたと話す土方。素材を見て将来的にプロ入りは狙える逸材と評価する。
確実とするのならばさらに真剣に野球を取り組んでほしい。
今後も追いかけていきたいと思わせる投手であった。

(文=編集部:河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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