城ノ内vs鳴門第一
３塁打の４番・林侑樹(鳴門第一)
勤勉に闘った城ノ内、鳴門第一に粘り勝ち！
「彼らには本当に頭が下がる思いです」。
このように若干26歳の城ノ内・福岡秀祐監督は３塁側ベンチから引き上げると破顔一笑、選手たちを褒めちぎった。それも当然だろう。今年度限りで鳴門工業との再編統合が決まっているとはいえ、鳴門第一は過去、春４回・夏1度の甲子園出場経験を持つ伝統チーム。２年前の夏にも豪腕・緒方悠（現：大阪ガス）を擁し県大会準優勝している県内屈指の強豪校である。
現チームに限定したとしても城ノ内にとっては昨年８月の新人ブロック大会で１対３、練習試合でも６対７とあと一歩手が届きそうで届かない相手。中学硬式野球ヤングリーグ春季全国制覇の生光学園中では出本優太郎（生光学園２年）と交互にマウンドに立っていた井上宝（２年）をエース格に擁しながら、「併設型中高一貫教育・県内屈指の進学県立校」たるがゆえの練習時間・場所制限が壁を超えられない原因となっていた。
しかしこの日の彼らは、学生の本分である勉強と同じように、チームコンセプトの「きっちり１個１個のプレーをやって、相手に対し針のように同じ穴を突いていく」勤勉な闘いを終始に渡り披露した。１・２回には相手左腕・浅井翔平（３年）が球をそろえてきたところを見逃さず３点を先制すると、逆に２点をリードされた６回表、そして８回には下位打線がつないだチャンスを２番・米田圭吾（１年）らが返す理想的な形で再逆転に成功。ここでは「練習でやってきている」（福岡監督）内野ゴロ突入で見事にホームを左手で掻いた大石和俊（３年）の好走塁も光った。
福岡秀祐監督（城ノ内）
さらに余談にはなるが、この試合で５打数３安打３打点を放った米田は、中学時代はソフトボール県選抜として「第6回都道府県対抗全日本中学生ソフトボール大会（男子）」にて、全国ベスト４に進出した選手。彼の豊富な経験値は硬式野球の世界でも十二分に発揮された形となったのだ。
こうなると、流れのスポーツである野球において城ノ内の勢いは止まらない。その裏に１番・田渕竜也（２年）の３安打目となる同点タイムリー後、１死満塁の絶体絶命となるピンチも「力強さが出てきた」と指揮官も評価する井上が中心となってしのいだ彼ら。最後は２死２塁から７番・山村颯（２年）が見事に右中間を破り、城ノ内は３度目の正直で鳴門第一を下したのである。
一方、「今日はホンマにやられた」と試合後は素直に相手を称えた鳴門第一・鎌田智仁監督。その表情は敗戦を悔しがりながらも、自らが目指す一生懸命闘うチームと対戦できた充実感も含むものであった。
（文＝寺下友徳）
