関西創価vs桃山学院
井阪京介投手(桃山学院)
裏の利点を生かし、勝負する勇気
桃山学院が、昨秋ベスト8の関西創価を苦しめた。相手エースで快速球が武器の重盛勝太(3年)を引きずれ出し、8回に追いついて延長までもつれこむ接戦。昨秋1回戦で敗れたチームにとって大いなる自信となったに違いない。
たが、桃山学院が勝ちゲームを落としたと、見ている者としては感じた試合でもあった。
桃山学院のエース・井阪京介(3年)は、終盤立ち直って7回以降ノーヒットピッチング。8回裏には自身のタイムリーで同点に追いついた。9回表の関西創価を三者凡退に打ち取り、流れは完全に桃山学院になっていた。
そして9回裏、1死から3番浦嶋航太(2年)と4番仲野祐馬(3年)の連続安打で1、3塁とサヨナラのチャンスを作った。打席は5番大脇大祐(3年)。マウンドの重盛が3球続けてボールとなり、無理に勝負しないかとも思われたが、4球目はストライク。これで関西創価バッテリーが大脇と勝負する意志を桃山学院サイドに示している。
5球目。大脇はスイングして打球は三遊間の前へ転がった。処理したのはサード藤本晃平(3年)。三塁走者の浦嶋は一瞬躊躇して本塁への突入をしなかった。併殺シフトではなかった藤本は、これを見て一塁へ送球し、場面は2死2、3塁と変わった。
桃山学院はここで代打水野敏博(3年)を起用するが、空振り三振に倒れて延長戦に突入することになった。
10回表、勝負を決めきれなかったという気持ちがあったのだろうか。井阪は関西創価打線につかまって2点を失い試合は決した。
市場寿和(関西創価)
桃山学院は私立校だが、野球は強化指定クラブではないと聞く。だからどちらかというと公立校と何ら変わらず、部活動として野球を楽しんでいる雰囲気のチームだ。
ただ、夏に悔いを残さないために、この9回裏にあった場はぜひ、教訓としてもらいたい。
大事なのは1死1、3塁での三塁走者の判断。この場面、本塁に突っ込んでもセーフに絶対なるとは言いきれず、だからといって確実にアウトになるような打球ではなかった。突っ込んでいたら恐らくクロスプレーで際どかっただろう。普段ならば無理して突っ込まない選択は間違いではない。
但し、この場面は9回裏。つまり三塁走者が生還すればチームはその瞬間に勝利を手にできる。打者の大脇は4球分の時間を得ていた。この間に走者は色んな打球をシミュレーションすることができるはずだ。
打球しだいだが、勝負して突っ込んで結果としてアウトとなっても2死1、2塁のチャンスが残ると考えれば、『ゴロならGO!』と割り切れれば、一瞬の躊躇もなくスタートを切れるはずだ。
走者の浦嶋はまだ2年生。難しいことかもしれないが、積極的に勝負できたならば、仮に無得点に終わったとしても10回の守りは心理的に変わってくるだろう。
このゲームはあくまでも春の大会でこの先に夏がある。これからその夏に向けて練習を重ねるだろうが、貴重な公式戦で出てきた一つ一つの場面というのは忘れないでもらいたい。
そして選択肢として、こんな考え方もあるのだと心のノートに刻んでいただければ幸いだ。もちろん全国の球児にも!
(文=松倉雄太)