越谷北vs杉戸
小松君(越谷北)
後半引き締まった粘りあいは、越谷北がサヨナラ勝ち
前半はお互いが1点2点、2点1点と奪い合ったので、ある程度は点の取り合いになっていくのかなと思えた試合。内容的にも、杉戸の4回の八番片野君のタイムリー打による2点以外は、いずれも失策や暴投が絡んだものだっただけに、いくらか雑な試合になってしまうのかなという最初の印象もあった。
ところが、6回からの展開は、それまでとはまるで別物のようになって、走者は出てはいるものの、お互いが守りで踏ん張り合うという内容で引き締まってきた。
特に、越谷北の小松君は後半になってもスピードが落ちることなく、いい投球をしていた。球速も135キロ前後は出ていたのではないだろうか。まだ2年生ということだが、181㎝と上背もある本格派だ。
昨秋は制球に不安があったというが、それがひと冬越えて整ってきたということは、自分でテーマを決めてしっかり取り組んできたことの証明でもあろう。
もちろん、専門的なことを言えばステップの際の体重移動がぎこちなくて、上体が乗っていないのがもったいないだとか、いろいろあるのかもしれない。
それでも、今の段階で、いわゆる無名校にこうした素晴らしい素材がいるということだけで十分だという気もする。
後半になってよくなってきたということは、投げていきながらある程度自分で修正が出来たということでもあるし、それだけクレバーなところもあるということだ。それに、スタミナも十分にあるということなのではないだろうか。
サヨナラ勝ちに沸く越谷北ナイン
力投する小松君を何とか楽にしてあげたい越谷北だったのだが、6、7、8回と走者を出しながらもあと一本が出ない歯がゆさもあった。逆に言えば、6回途中からリリーフした杉戸の高橋君もよくこらえていたということがいえるのだろう。
こうして同点のまま迎えた9回。杉戸は失策の走者と四球で好機を作ったのだが攻めきれなかった。もしかしたらこのまま延長にもつれていくのではないかという気配が濃厚になってきたのだが、その裏、越谷北は2死一塁から六番倉持君がレフト線へ運んで、左翼手のグラブをかすめる長打となってこれがサヨナラ打となった。
杉戸としては、後半は押され気味だったのを何とか凌いでいたのだが、最後はこらえきれなかった。
それでも、昨秋のブロック予選はコールド負けしたチームが、この春はシード校の獨協埼玉を下して、この試合もここまで粘ることが出来た。
「大敗続きで始まった今年の新チームだったのですが、そのことを思えばよくここまで来たともいえます。ただ、こうした県大会がかかる試合になると、緊張しすぎてしまうんですね。先発した海野は最近では一番良くない内容でした。皆な、おとなしい子ばかりなんですよね、野球でなければ…、いい子たちなんですけどね。そういう気質が出てしまったんでしょうか」と、高橋薫監督は振り返っていたが、それでも選手たちの成長については評価して、また、夏へ向けて、もう一つランクアップしていこうと意欲を示していた。
(文=手束 仁)