西条vs松山北
西条先発の小川慶也(2年)
“不完全燃焼の「1-0」”
「西条が1点を守る完封リレー、松山北は8安打も決定打を欠く」
この試合で普通に見出しをつけるとしたらこういう感じになるだろう。しかし、その内実は双方にとって得るところの少ない、正に「不完全燃焼」なものであった。
まずはスコア上では惜敗に終わった松山北でいえば、ランナーを置いたときの攻撃バリエーションの不足は深刻の一言。
打線は相手投手がストライクを取りに来たボールを簡単に打ち上げ、井上伸二監督が仕掛ける数々の作戦も、的確に決まったのは4番・服部憲(3年)が初回に決めたヒットエンドランのみ。
7回表無死1,2塁の絶好機でもダブルスチール失敗で00とあっては、2人で2安打ずつに西条打線を抑えた横山大路(3年)、中浦大貴(2年)の好投に報いる結果は難しかったと言わざるをえなかった。
一方、勝った西条も決して褒められた内容ではない。
「相手がインサイドを攻めてくる気迫に押された。シーズン明けなんで・・・野球はこんなものです」と、田邉行雄監督は打線を評したが、ノロウィルスから復帰した途端に手の甲に死球を受け、この試合がようやく復帰戦となった高校通算24発4番・本藤光貴の不振を差し引いたとしても、4安打は寂しい限り。5回裏2死2,3塁の場面で2番・續木恵太(3年)のタイムリーで先制した場面でも、2塁ランナーの小川慶也(2年)が暴走に近い走塁で本塁憤死。
以降がクリーンナップということを考えても、自らへの援護を自ら絶ってしまう行為はやや理解に苦しむものであった。
県大会から復帰の本藤光貴(西条3年)
「けが人も多いし今年はチームが仕上がらない。締まらんのですよ」と、昨年の同大会で秋の東予地区予選敗退から準優勝にまで西条を立て直した指揮官は、筆者と1対1になったところでチームにスイッチが入らない現状を嘆いたが、一昨年には春夏の晴れ舞台を経験しているチームがこれではいけない。
今愛媛県代表がセンバツにいない原因はいったいどこにあるのか?
そして甲子園では今、何が起こっているのか?
西条に限らず、全ての愛媛県高校野球にかかわる者はそこに対し、耳を、目を、そして五感をフル活用してほしい。
そうすれば少なくともこんな不完全燃焼な「1-0」に対し、手放しで喜ぶことはとてもできないはずだ。
(文=寺下友徳)