福岡第一vs宇美商
試合シーン1(福岡一)
15人の全力疾走
【宇美商高校】
現在の部員は14名と女子マネージャー1名。
全員がベンチ入りメンバーで、スタンドには保護者のみ。
ボールボーイを出すと、守備のときのベンチはガラガラ。
試合中のグラウンド整備も、次のチームが協力してくれる。
15人一丸となって強豪福岡第一と対戦した
試合は、なかなか動かなかった。
5回まで、宇美商はほぼ完璧に抑えられていた。福岡第一も毎回1本ずつヒットは出るものの塁を進めることができなかった。
ただ、そんな中でも宇美商ナインは、いつも全力疾走。高校野球ではグラウンド内で走ることは当然だと思うが、「全力疾走」なのだ。守備につく時も、守備が終わった時も、三振してベンチに帰ってくる時も。動きがない5回まででも、見ていて気持ちがよかった。
動いたのは6回表。宇美商は先発の森に代打藤を送ると、初球をセンター前に運ぶ。犠打と相手のフィールダースチョイスで先制。四番井上の犠飛もあり、この回2点を挙げる。
野球でよく言われるのが「取った後の守備が大事」
2点を取った後の守備…6回裏からはショートを守っていた松永がマウンドに上がる。2アウトを取り4番泰中にセンターオーバーの二塁打を打たれてしまう。しかし、続く実熊のライト前に落ちると思った打球をセカンド川原がジャンピングキャッチ。バックも盛りあげる。ジャンプした際に出たユニフォームをズボンに入れながら、ここでもまた全力疾走で戻ってきた。
試合シーン2(宇美商)
7回裏ついに福岡第一が反撃に出る。先頭石崎が出塁すると、盗塁、犠打で進塁。9番菊岡の内野ゴロの間に1点を返すと、続く1番矢野のタイムリーで一気に同点に追いつく。
追いつかれた宇美商は8回表、1アウトから守備で好捕も見せた1番川原が右中間を破る三塁打を放つと、3番副島のタイムリーで勝ち越す。4番井上、5番甲斐の連続四死球で2アウト満塁にするも追加点は挙げられなかった。
ただ、この回も宇美商の「全力疾走」が見られた。5番甲斐が死球を受けた際、一瞬うずくまったがその後一塁まで「全力疾走」やはり見ていて気持ちがいいものだった。
試合は、8回裏に先頭打者に四球を与えてしまうと、5番実熊、6番石崎の長短打で同点にされてしまう。2アウト1,3塁、9番菊岡を2ストライクと追い込んだ後タイムリーを放たれ、これが決勝打となった。
試合は4-3で福岡第一が勝ちを収めたが、宇美商にとっても大きな収穫があった試合ではないだろうか。また、見ていて本当に気持ちの良い試合であった。
「次の大会、頑張ります」
そう話す女子マネージャーの目には、きらりと光るものが見えた。新一年生も入った宇美商が今後どのような「一丸となった試合」を見せるのか、今から楽しみである。
(文・撮影=鎌倉 彩)