碧南vs渥美農
先発の中尾真也(碧南)
公式戦最後を勝って締めくくった碧南、三河地区3位入賞
三河地区の代表16校が凌ぎを削る第123回全三河高校野球大会は13日、豊橋市民球場で決勝と3位決定戦を行い、3位決定戦では接戦を制した碧南が渥美農を8-7で下した。
碧南は2001年夏の大会でベスト4。渥美農も近年めきめき力をつけている。県外の高校野球ファンにはピンとこない高校かもしれないが、ともに押さえておきたい野球部である。
試合は中盤まで碧南が4点をリードしていたが、終盤にもつれた。8回表、渥美農が4点を返し同点に追いつくと、その裏に碧南は3点を挙げ勝ち越した。食い下がる渥美農は9回表、反撃して1点差まで詰め寄ったが、あと一歩及ばなかった。
今シーズン最後となる公式戦で、三河地区3位の座を射止めた碧南。山下統司監督は「勝ったという意味では、非常に意義があったと思います。これでシーズンも終わりなので、いい形で締めくくることが出来ました」としながらも、「勝って喜んでいるだけでは意味がないですから。普通なら5-1のスコアのままで終わっている内容ですし、雑なところもいくつかありましたので…」と、チームを引き締めた。
先発した碧南の左腕・中尾真也は、8回表の途中に相手打線に捕まったが、7回までは1失点に抑えて試合をつくった。投球の間合いは短くないものの、一球ごとに集中して投げているように見える。
山下監督は「気持ちの面でも成長して、周囲が見られるようになってきました。とはいえ、まだようやく普通の水準になってきたというレベルですが…。ただ、コントロールも向上してきましたし、ここ最近で急激に伸びてきています」と、中尾の成長を口にした。
このサウスポー、真っすぐに球速表示以上のスピード感がある。また変化球が多彩で、打者の外角へ逃げる球が光る。左打者の外角へスライダー系を流すのは誰でもやるが、それに加えて右打者の外角へシュート回転するボール(シュート、チェンジアップ)を配することが出来るのは、大きな武器だ。さながら小型・長谷部康平(楽天)である。中尾については「選手名鑑」のコーナーで詳しく取り上げたので、そちらも参照されたい。
「試合が中盤を過ぎたあたりで、ストレートが沈んできた(威力が落ちてきた)ので、変化球でかわすようにしました」と中尾は工夫したが、8回表に3本の長短打と味方のエラーで失点し、ランナーを残して降板した。ここから、碧南は継投で試合を乗り切ることになる。
1年生の三田侑輝(碧南)
中尾の後を継いで8回表ピンチの場面でリリーフした宇都将弥は制球が定まらず、押し出しで同点を許す悪い流れに。ここで、宇都に代わって登板した1年生の三田侑輝が相手の上位打線を抑え込み、8回表を切り抜けた。「『もう三田でいってしまえー!』という感じで、投入しました。
でも三田は気持ちも強いし、制球力もあるので、期待しているんですよ」と山下監督は話すが、その期待にこたえた格好だ。
それでも9回表、三田が相手に3連打を浴びるなど1点差に迫られ、なおも一打同点の局面を迎えたが、ここで再度マウンドに上がった宇都が、今度は好リリーフを見せて凌いだ。
「宇都は球速が130キロを超えますからね」
と、夏はエースナンバーを背負った力投派を再度起用した山下監督の決断も奏功した。
碧南は初回に井野拓の2点タイムリーで先制すると、5回裏、7回裏に宇都のタイムリーなどで加点。スイングと走塁の行き足がいい3番打者の比嘉航大は、同点に追いつかれた直後の8回裏にタイムリー三塁打を放った。
渥美農は敗色濃厚の終盤、一度は試合を振り出しに戻し、最終回も同点寸前まで詰め寄った粘りは、さすが秋季東三河地区大会1位の実力だ。1番打者の稲垣誓士、4番打者の大倉次良を打線の核とし、打撃賞第2位の表彰を受けた酒井慎一郎ら下位打線でもチャンスを作った。投げては岩瀬紀寛が点を取られながらも最後まで一人で投げ抜いた。
(文=尾関 雄一朗)