試合レポート

刈谷vs杜若

2010.11.15

2010年11月13日 豊橋市民球場

刈谷vs杜若

2010年秋の大会 第123回全三河高校野球大会 決勝

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鈴木富敬(刈谷)

レギュラー9人中7人が1年生の刈谷が全三河大会を制覇

 愛知県で最も楽しみな高校の1つが刈谷だ。刈谷は1年生陣がレギュラーをつかみ、この試合でもスタメン9人のうち1年生が7人を占める。フレッシュなチームだがまとまりもあり、この全三河大会(10月30日~、[stadium]豊橋市民球場[/stadium]ほか)で優勝を飾った。
 決勝では私立の強豪・杜若と対戦。岡田泰次監督は「左打者が多いチームなので、左投手(杜若先発・三木雅也)を相手にロースコアになると予想していました」とのことだったが、相手ピッチャーの四死球を得点に絡める嫌らしさを見せ、試合を優位に運んだ。

 刈谷は県内屈指の進学校で野球部も強く、豊田西と並び「文武両道校」として注目の存在となっている。2009年冬には、センバツ甲子園21世紀枠の東海地区推薦校としてノミネートされた。
ちなみにその直前の09年夏は、堂林翔太(現広島)、磯村嘉孝(今秋広島ドラフト5位指名)のバッテリーを擁した中京大中京と県大会決勝で相対している。0-5で敗れたものの、140キロ右腕・早川人希の快投などで創部51年目にして初の決勝進出をつかんだ。08年夏も東愛知大会で準決勝まで駒を進めており、以前に増してより一層、他校にとって脅威の的となっている。

「今秋の県大会(2回戦敗退)では、最低でももう2つ3つ上に行きたかった(勝ち上がりたかった)です。センバツも狙えると思っていましたので…」と、岡田監督は今の地位にもちろん満足はしていないが、甲子園の舞台へ上がる日も遠くないかもしれない。

 さて、持ち前の高い集中力で成長を続ける若いチームにあって、一番の存在感を見せるのは3番打者でショートを守る鈴木富敬(ひさのり=1年生)だ。同期メンバーで唯一、1年生の夏からレギュラーの座をつかみ、チームの中心選手として機能。攻守に高いセンスを発揮している。守備では、少々厳しい体勢からでも一塁へ送球を長く伸ばせる強肩がある。フィールディングでも、打球に対してバタつかず、スピーディーに足を運んで処理することができる。

「中学では主に投手だったので、高校から本格的に内野手に取り組んでいます。最初はダメなプレーばかりだったんですが、監督に『ノックをもっと受けろ』と言われて練習に取り組み、その結果自信がついてきました」

と、成長の跡を見せた。

「今日はヒットはありませんでしたが、守備で声を出せました」と決勝戦を振り返る鈴木。一番の武器は俊足と走塁で、50メートル走のタイムは6秒台前半をマークする。
鈴木について岡田監督は「思いきりがいいし、足も速く、気持ちも強い。味方に良い指示が出せて、チームの柱になっています」と話し、早くも信頼を寄せているようだ。


高木健太郎(刈谷)

 他に野手では、大きくシャープにスイングできる1番打者の高木健太郎(1年生)も目を引いた。岡田監督は「まだまだ粗削りな面もありますが…」としながらも、「プレーが前向きだし、見ていておもしろい選手だとは思います」と、今後の伸びに期待をかける。

 筆者が刈谷の試合を観戦するのは今年3度目。春(知立東戦)、夏(一宮南戦)、そしてこの秋と、シーズンごとに拝見している。足を運ぶようになった最大の目的は、やはり身長193センチの超大型右腕・服部卓(2年生)だ。入学時から嘱望され、元力士の「藤ノ川」を叔父にもつエピソードもあわせて、地元スポーツ紙などで取り上げられた素質抜群の選手だ。部員の中でも、その充実した体躯は一目で分かる。
 この日はランナーを出すシーンもあったが、5被安打2失点で完投勝利。大会の殊勲賞に選ばれた。
本人は「今日はスライダーもキレていなくて、前の試合の方が良かったです」と感触は今ひとつの様子だったが、調子が悪いときなりに抑える事もエースとしては大切なこと。

「1年生夏の県大会準優勝の際もベンチ入りし、先輩たちの姿を見たりアドバイスを受けたことで、メンタル面が伸びたと思います。徐々にストレートにノビも出てきましたが、この冬はスピードを上げたいです」

と、高校野球2年目のシーズンを終えて成長と課題を語ってくれた。

 試合は序盤に敵失や押し出しで刈谷が試合を優位に進め、6回表には大原圭太がレフトへ2点タイムリーを放ちリードを広げた。全三河大会の優勝は平成18年の秋以来4年ぶり(全三河大会は春、秋の年2回開催)。

 敗れた杜若は大会の敢闘賞に1年生左腕の中尾輝、打撃賞第1位に山口智也、同3位に渡辺哲彦が輝いた。

(文=尾関 雄一朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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