大垣日大vs静清
葛西侑也投手(大垣日大)
打線爆発、大垣日大連覇!
前日から降り続けていた雨は止み、グランドも試合開始を3時間(10時→13時)に変更した効果から、それなりに回復した。
しかし、最後まで回復しなかったのは強い風である。東海大会決勝は風のいたずらか、序盤から慌ただしい試合展開になった。
試合開始前のシートノック。先に行った大垣日大ナインは、フライの捕球がなかなかうまくいかない。
ノックを打っているコーチで冴え、首を傾げるほど。最後のキャッチャーフライは風に流されて、一塁ベース近くまでいっていた。
その後に行った静清のノックも同様。
試合が始まる前に、この日の風がどんなものかは両校とも認識したはずだ。
ただ一つ両校で違ったのは、先に行った大垣日大が風を踏まえたうえで、ノックを食い入るように見つめていたことか。
立ち上がり、まず風に戸惑ったのは大垣日大の方だった。
静清は2死から3番加藤翔(2年)がヒットで出ると、4番野村亮介(2年)は5球目を打ち返すと打球は左中間へ。
レフトの畑和来(2年)が「予想以上に打球が伸びた」と話したように、風にのって左中間を真っ二つに破る三塁打。
加藤が一塁から一気に生還し静清に先取点が入った。
その後、5番松田修治(2年)の2球目が暴投となって2点目を挙げた静清。
マウンドの大垣日大の左腕・葛西侑也(2年)は完全にバタバタとしていた。
1回裏に本塁打、2回裏にタイムリーを放った1番・畑(大垣日大)
1回裏。『攻守所を変える』とはこのことか、大垣日大がすぐに反撃する。
まずは1番の畑が静清のエース・野村の初球のストレートを叩く。
振り切った打球は風にも後押しされてレフトスタンドへ消えていった。
初回の2点で気を良くした野村の出鼻を挫く一発。
打った畑は「どんな球か覚えていません」。
さらに大垣日大は2番後藤健太(2年)が二塁打、3番星野真一郎(2年)がヒットで続き1、3塁。4番高田直宏(2年)は6球目を打ち上げた。
平凡なファーストフライだったが、風に流されて内野手は誰も捕球できずに三塁走者の後藤健が生還。
これで、あっという間に試合は振り出しに。
この回まだ打線が繋がった大垣日大は結局4点を挙げた。
2回になっても試合はまだ落ち着かない。静清は先頭の6番柘植亮佑(1年)が初球をレフトスタンドへ運ぶ本塁打。
さらに9番南隼哉(2年)がタイムリー二塁打を放った再び追いつく。
しかしその裏の大垣日大も1番畑の二塁打でまたも勝ち越し。
ロースコアの接戦と見ていた両チームにとって予期せぬ展開で、試合の行方はまったくわからなくなった。
まるでコロコロ変わり選手を苦しめる風向きのように。
その打撃戦が崩れたのが3回表。
静清は先頭の加藤が2球目を打ってファーストゴロ。4番の野村は初球をライトフライ、さらに5番松田は初球をセカンドゴロと、葛西にとってはわずか4球でこのイニングが終わった。
初めて試合が落ち着いたのである。
6番・時本亮(大垣日大)
その裏、大垣日大も3人、わずか7球で終わることになるが、6番の時本亮(2年)はクリーンヒットを放った。この違いがこの試合の明暗のように思える。
4回表も静清は三者凡退。経験豊富な葛西はこれで完全にリズムを取り戻した。投球数もこの時点で63球と決して多すぎる数ではない。
その裏の大垣日大。
先頭の8番上木健晴(1年)がヒットを放つ。ここから送りバント、死球でチャンスを広げ、2番後藤健、3番星野の連続タイムリーで7対4。
静清はエース野村をあきらめて、2番手に望月を送った。
望月も4回こそ抑えたが5回に捕まる。
大垣日大の8点目は9番安藤嘉朗(2年)のスクイズ。そして9点目は2番後藤健のタイムリー。
しっかりとバットを振り切ってセンター返し、そして躊躇のない走塁で着実に得点を積み上げていった大垣日大。
6回には2ランスクイズまで成功させるなど、攻撃バリエーションの豊富さをみせつけた。
一方の大垣日大・阪口慶三監督は「これまでは葛西に頼っていた部分があったが、この東海大会では打線が良く打った。監督の私もビックリですよ」と成長を実感している様子。
完投したエース葛西は「去年(阪口)先生は一戦一戦と言っていたが、今年は神宮に出ようと言ってくれた。それを達成できてうれしい」と笑みを見せた。
史上初の明治神宮大会連覇へ、経験者5人が残るだけに現実味は十分感じられる決勝での戦いぶりだった。
(文=松倉 雄太)