鳴門vs川島
吉田忠浩(鳴門)
“雑草軍団”川島の夏が終わる
(試合経過)
鳴門は2回裏に7番・石堂忠継(3年)が主将の責任を果たす先制タイムリー2塁打を放つと、4回には相手失策と1番・津川祐規(3年)のセンターオーバー2点タイムリー3塁打、5回にも石堂のタイムリーで着々と加点。「外角はきれいに流して、内角は引っ張ってきた」と対戦相手の南優希捕手(3年)も感心するほどの徹底したコース打ちで、右ひじに違和感を抱えるエースの東谷祐希(3年)を5回で降ろすことに成功する。
さらに8回には東谷をリリーフした西岡慎矢(2年)から2死2・3塁とチャンスを広げたところで代打に立った宮崎成将(3年)が一塁手のグラブをはじく2点タイムリー。7点差をつけて川島をコールドで下し、12年ぶり7度目となる決勝の舞台で今季3度目となる小松島との頂上決戦に挑むことになった。
川島
打線は「力まずに7~8割で投げる」変化球が終始低めに安定した鳴門の最速143キロ右腕、吉田忠浩(3年)の前に2安打と反撃の糸口すらつかめず。21世紀枠で出場し、大垣日大(岐阜)相手に大健闘した選抜大会をはじめ、数々の感動を与えてきた雑草軍団の春夏甲子園出場はあと2勝のところで絶たれた。
(インサイドコラム)
「新チームが始まったときは最初18人と少なくて…」と話し始めたところで声を詰まらせた
川島
・藤畠慶祐主将、それは全国でも話題を呼んだ彼らの大躍進の始まりが決して順風満帆でなかったことを如実に表すものである。
事実、それまで内野手だった東谷祐希(3年)が立候補するまではゲームを作れる投手すらいなかった
川島
は公式戦新人ブロック大会でも初戦敗退。秋季県大会でも「校歌を1つ歌うこと」という極めて現実的な目標から始まった彼らにとって、県大会3位、四国大会1勝、そして選抜大会21世紀枠出場は、夢のような瞬間の連続であったといえるだろう。
ただ、彼らの闘いぶりを追い続けてきた筆者の眼から見ると、
川島
が誰よりも秀でていた点が1つある。それは「自分たちのハンデ、弱さを認識し、それを克服するため努力を惜しまない力」。
普段は内野しか取れないグラウンド、春季チャレンジマッチ・小松島戦での記録的大敗など、普通の高校生であれば心折れる条件が多々あった中でも彼らは何度でも這い上がってきた。それはこの夏においても変わらず、5点差を覆した脇町戦での逆転勝ち、徳島商からの初勝利などはこのチームの真骨頂たるゲームだったと断言できる。
「相手が何枚も上手だった」と北谷雄一監督も振り返ったように、最後のゲームは完敗に終わった
川島
であるが、彼らがここまで積んできた努力はそれぞれの体にしっかりと刻まれたはず。3年生はそれぞれの舞台で、そして脇町戦で素晴らしいリリーフを見せた西岡慎矢(2年)を始めとする下級生はこれからの戦いで、この1年間に学んだことをしっかり表現してほしい。そう、高校野球は終わっても彼らの人生における戦いはここから始まるのだから。
(文=寺下 友徳)
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川島 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |||||||
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鳴門 | 0 | 1 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 2X | 7 |
川島:東谷祐希、西岡慎矢-南優希 鳴門:吉田忠浩-井上大輔
鳴門は昭和53年(1978年)の1県1代表制導入以来12年ぶり7度目の決勝戦進出