試合レポート

明徳義塾vs岡豊

2010.07.25

2010年07月24日 高知県立春野運動公園野球場

明徳義塾vs岡豊

2010年夏の大会 第92回高知大会 準決勝

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岩元俊樹(明徳義塾)

明徳義塾、「凄み」のスミ1で決勝へ!

岡豊明徳義塾に9対2で7回コールド勝ちした春季大会準決勝以来の対戦となった準決勝。馬淵史郎監督就任以来初どころか、チームとしても30年振りとなる公式戦コールド負けを喫した恥辱を晴らすべく、この試合に臨む明徳義塾の目標は「絶対に負けたくない」(松森大河主将)の一語で統一されていた。

その異様なまでのテンションは13時の試合開始直後に爆発する。最速145キロ、この日も最速141キロを計測した直球と鋭いスライダーを持ち、「四国ナンバーワン右腕」と周囲も認める岡豊・田内亘(3年)に対し、明徳義塾は1回裏先頭の庄司優斗(3年)が1・2塁間を破って出塁。これを梅田翼(2年)が確実に送って迎えた2死2塁の絶好機に、4番の北川倫太郎(2年)レフト頭上を越える2塁打で先制。久々に飛び出した主砲による逆方向への「らしい」一打に北川はガッツボーズを繰り返し、ベンチは雄叫びで応えたのである。

その後は調子を取り戻した田内の前に徐々に勢いを失っていった明徳義塾打線。しかし、この日の彼らには1点さえあれば十分であった。今大会初登板の明徳義塾先発右腕・岩元俊樹(3年)は、自己最速タイとなる143キロをはじめ、軒並み140キロ台の直球で今大会好調岡豊打線の勢いを止めると、バックも3回戦の室戸戦に続き今大会通算3個目の「ライトゴロ」で魅せたシング・アンドリュー(3年)をはじめ、連日にわたる全体での朝練習や2時間のノックで鍛えた堅実な守備で岩元を援護。結果、岩元はわずか94球で2安打完封勝利。明徳義塾は昨年に続く決勝進出を果たすと同時に、夏は平成16年(2004年)の第86回大会、春を含めても平成20年(2008年)以来遠ざかっている甲子園へ「あと1勝」と迫ったのだ。

「6月になって部員全員で集まったりして『絶対に夏は一緒に甲子園にいこう』と何度も話し合いました。決勝戦ではしっかり守って1点もやらないように、そしてみんなの気持ちを全面に押し出して戦っていきたい」と、ときに涙すら浮かべながら決意を語った松森主将。「甲子園に行くにはこんなゲームを1回はくぐりぬけないといけない」と馬淵監督も満足げな「凄み」のスミ1勝利を経て、彼らはまた一歩、野球人として大切なものを手に入れたはずだ。

「春の大会が終わった時点で岡豊と準決勝で当たることはわかっていたので、この一戦に賭けていた。だから7回に(4番と6番を変える)守備固めをしたときも普通は延長戦を考えれば躊躇するもんだけど、今回は全く躊躇はなかったし、これで練習をやってきたのだからこれで行くしかないと思っていた。エースが投げて4番が打ったら勝つ絵に描いたいようなゲーム。高校野球の典型みたいなナイスゲームでした」。

試合後、記者団に囲まれ故郷の伊予弁混じりでいつも以上に雄弁に語った馬淵史郎監督。それもそのはず、この岡豊戦における采配は正に馬淵野球の真骨頂を存分に発揮したものだったからだ。

例えば先発投手。「ブルペンで黙っていたら500球から600球は投げるので、スタミナは全く心配していない」エースの岩元俊樹(3年)を組み合わせが決まった時点で準決勝の先発に指名。「(相手の)田内亘は4試合目、お前は始めてのゲームだから、そこで差が出るぞ」と力強く送り出された右腕の結果は本人も「100点」の2安打完封であった。

さらに先制点の場面を切り取っても、そこに至る過程は理詰めであった。最速145キロの田内対策として「甲子園に行ったらあんなピッチャーたいしたことない」とモチベーションを与えつつ150キロのマシンで存分に打ち込んだ後、ゲームでは「ストライクでも変化球の低めだけは絶対打つな。見逃し三振してもいい」と徹底研究したデータに基づく指示を与えたことが、「外角のストレートを待っていた」4番・北川倫太郎のタイムリーにつながったのである。

ただし、名将が名采配を振るえるのもグラウンド内での体現があればこそ。「ベンチにいる3年生が声を出してくれたし、仕事もしてくれた。根性論を出したらイカンが、根性が大事だと今日改めて気付いた」と指揮官を感心させた選手たちの覚醒も、この決勝進出には欠かせないものであった。

最後には「お互い高知県代表として恥じない試合をしたい」と高知商との4年ぶり7度目となる決勝戦を見据えた馬淵監督。「決勝戦の先発も大会前から決めている」と、ポツリともらした眼鏡の奥には、過去に甲子園で何度も見られた鉄の意思を持った瞳が輝いていた。

(文=寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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