試合レポート

坂戸西vs東農大三

2014.07.10

3点リードを追い付かれた坂戸西だったが、再び突き放す粘りを見せる

 今年の6月は、とくに下旬にかけて、ことのほか週末に雨が集中するということが多かった。だから、土、日曜日に練習試合を組むことの多い学校にとっては、最終的なチーム作りをイメージしていたような予定通りにできなかったというところも少なくない。ことに、グラウンドを保有していて、自校で練習試合を組んでいるところは、そんなケースが多かったようだ。坂戸西もそんな一つである。

 だから、「左右の安定した投手を作っていこう」ということを今年のチームの一つの柱としていた坂戸西の野中 祐之監督はあえて、の初戦のこの試合の先発はぎりぎりまで伝えないで二人に競わせて、しっかり準備しておこうということを伝えていた。こういう形で緊張感を維持させていっていたのだ。

 そして、ぎりぎりで先発を伝えられたのが背番号10の左腕伊芸君だった。時に、ふわ~っとした80キロくらいの緩いボールを投げるトリッキーなタイプの投手だ。その伊芸君が序盤から飛ばして、2回までで5三振というハイペースの投球だった。そして、打線も積極的で3回に3番大城君以下、松本君、鳥山君、佐藤洸君と4連打するなどで3点を先取した。

 しかし、伊芸君も4回に秋山君に初安打となる中越二塁打を浴びると、この回は深澤君の中前打で1点を失い、5回にも失策と死球などでピンチを作り押し出しで1点差。ここでマウンドを右の桐ヶ窪 一哉君に譲ることになったが、結局失策で同点となる。

 振出しに戻った試合は、坂戸西が7回、4番松本君の左前打と四球などで1死一三塁として、暴投もあって三塁走者が帰り再びリードした。さらに8回にも3人目の山口君を攻めて、暴投で1死二三塁として、その直後に途中から出場して1番に入っていた石山君がフルカウントからスクイズを決めた。続く有山君も遊撃内野安打してさらに1点を追加した。結果的には、9回に東農大三の4番秋山君に2ランを浴びてしまっただけに、非常に貴重な追加点ということになった。


 試合後、野中監督は、「今日は、最初からこういう試合になるのではないかなとは思っていました。スコアとしては6対5とか7対6とか、そんな感じかなと思っていたのですけれども、その通りになりました。だけど、さすがに疲れましたよ」と、2時間34分の点の取り合いにぐったりした様子だった。

 それでも、「8回のスクイズは、前の回の1死一三塁のチャンスで打たせて結果的には右飛で帰せなくて、その後に暴投でホームインできたんですけれども、その時に打者はスクイズ(のサイン)を待っていたんですね。それを確認しましたから、やっぱり夏の大会の初戦は、そうやって行った方がいいのかなと思ってフルカウントだったんですけれども(スクイズのサインを)出しました。あの子(石山君)は、チームのユーティリティープレーヤーで非常に器用で、投手以外は全ポジションできる子なんですよ。だから、サインも出しやすかったんですけれども、よく決めてくれました」と、采配が当たったことを喜んでいた。

 こういうところには、常に選手の特性と思いを指揮官がどれだけ見つめているのか、そして、どれだけ生かしてあげようとしているのか、そんな要素もあったのではないだろうかという気にさせてくれるシーンでもある。そういう意味では、常に選手と対峙しながら取り組んでいる野中監督の日頃の指導が選手にも伝わっていたということを表わすものでもあったといってもいいのではないだろうか。

 東農大三は、9回に秋山君が2ランを放って抵抗を示していた。スタンドも、統制のとれた応援団がきりっとした応援を披露していた。埼玉大会の名物の一つといってもいいくらいに、それを楽しみにしているファンもいるくらいの伝統の応援である。スコア的には一歩及ばなかったものの、東京農大第三高校健在を示すには十分の内容の試合だったといっていいだろう。

(文=手束仁

【僕らの熱い夏2014 第37回】坂戸西高等学校(埼玉)
どん欲に次を狙う走塁。泥にまみれた守備。長打よりも一塁へ滑り込んでのセーフを重ねた打撃。逆転、延長、サヨナラゲームを常に頭に入れて練習しています!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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