加世田vs鹿児島
好投、好走塁、シードに競り勝つ
エース下大薗貴（3年）の気迫の力投、果敢な走塁…加世田が持ち味の野球を随所に発揮して、シード鹿児島に競り勝った。
立ち上がりから、右横手のエース下大薗が小気味よく力投を続けた。「春までは立ち上がりがいつも悪くてチームに迷惑をかけていたけど、春以降は立ち上がりからベストピッチができるようにアップから工夫するようになった」と下大薗は言う。6回までは確実に先頭打者を打ち取り、守備に良いリズムをもたらした。7回に初めて先頭打者を出して迎えたピンチは、自らのバント処理、併殺で切り抜け、8回は2点を失ったが「みんなが守ってくれると信じて、最後までしっかり腕を振ることができた」。直球、スライダー、抜いたスライダー、打者に応じて巧みに使い分け、打ち取るごとに派手に喜ぶパフォーマンスとは裏腹に、最後まで冷静に投球を組み立てる姿が印象的だった。
攻撃では長打なしの5安打しか打てなかったが、身上の果敢な走塁野球で少ない好機を着実にものにした。
2回の先制点は二死から下位打線が粘って作ったチャンスに、1番・折田晃貴主将（3年）がタイムリーで奪った。2、3点目は7番・日渡啓太（3年）の足がものをいった。4回、四球で出て、送りバントで二塁へ。三塁前のバントで遊撃手の三塁カバーが遅れているのを見て取り、一気に三塁を陥れる。「普段の練習ではやっているけど、試合では今まで出せなかったプレー」（日渡）だったが「最後の夏だから思い切れた」。初球スクイズが決まり無安打で2点目を挙げた。6回の3点目は二死一二塁の二走で、折田の内野安打の間に「コーチャーの木落（明・3年）の指示が聞こえて」判断良く本塁を陥れた。
「お父さんが上で見守っているぞ！」
8回裏のピンチをしのいでベンチに戻ると、児玉勇監督が下大薗に声を掛けた。父・利一さんを1年夏に亡くしてから、下大薗は「普段の練習から父が見守っていると思って」野球をやっている。チームの倍以上の11安打されながら、シード校に競り勝つことができたのは、最後まで仲間を信じて腕が振れたことと「父のおかげでいつも以上の力が出せた」と天国の父に感謝していた。
(文＝政純一郎)
