試合レポート

【春季鹿児島大会】鹿屋農が決勝進出、「地に足つけて野球をやる」

2024.04.05


鹿屋農・吉元 翔皇

<第154回九州高校野球大会鹿児島県予選:鹿屋農4-1出水中央>◇4日◇準決勝◇平和リース

鹿屋農出水中央は昨秋の3回戦でも対戦し、この時は鹿屋農が8対1の8回コールド勝ちを収めた。一冬を越えた両者の成長ぶりが試される一戦だった。

先手をとったのは鹿屋農。1回、2死二塁から4番・吉元 翔皇(3年)の左越え二塁打で先制する。

4回は併殺崩れの間に得点、5回は6番・杉浦 照(3年)の左前適時打、6回は2死から連打を浴びせ、3番・出水 康晴(3年)の中越え三塁打と、そつなく加点する。

出水中央は2、3回と無死から2人の走者を出したが、いずれも併殺で打ち取られ得点ならず。

鹿屋農の左腕エース吉元は4回以降、テンポよく3人ずつで打ち取り、出水中央に得点の気配も与えなかった。

9回も簡単に2死となり、このまま鹿屋農が完封かと思われたが、そこから出水中央が意地を見せる。

四球と連続内野安打が出て、3番・坂口 楓(3年)の内野安打で1点を返した。なおも好機は続いたが、最後は吉元が踏ん張って三振で切り抜け、鹿屋農が春夏秋、すべての県大会を通じて初めてとなる決勝進出を勝ち取った。

「地に足つけて野球をやろう!」

9回、1点を返されてなお2死一、二塁、4番・竹山 拳士郎主将(3年)を迎えた場面で、鹿屋農・今熊浩輔監督は伝令を送った。

簡単に2死となって、エース吉元の投球も、野手陣の動きも明らかに勝ちを急いでいる。自分たちの野球は農業高校らしく、どっしりと落ち着いて、大地からエネルギーをもらう野球だったはずだ。

「力を抜いてコースを突いて、打たせて取る」。エース吉元は自分の投球を思い出した。力で牛耳ろうと力んで、上半身だけで投げて四死球を連発した準々決勝・鹿児島玉龍戦の反省点を修正し、冬場走り込んで鍛えた下半身主動のフォームを意識した。最後に選択したのは直球でなく、スライダー。タイミングを完全に外した狙い通りの空振り三振で、チーム初の決勝進出を決めた。

「子供たちが持っている力を存分に発揮してくれた」。今熊監督は感極まって涙する。エース吉元がテンポ良く好投し、守備も無失策で盛り上げ、攻撃のリズムを作る。攻撃は積極的に打って、仕掛けて、そつなく得点を重ねる。準々決勝ではできなかった自分たちらしい野球を随所にやり切って、歴史の扉を開いた。自分たちの快進撃を「地元・鹿屋の人たちが喜んでいる」ことが今熊監督は何よりうれしかった。

体を反らして大声で勝利の校歌を歌った後は、歓喜の喜びを爆発させることもなく、淡々とスタンドに向かってあいさつした。「勝ったら次の試合がありますから」と吉元。過ぎた結果に一喜一憂せず、次のための反省、準備をする。今大会常に心掛けていたことだ。「強い相手だけど、チーム一丸でぶつかっていくだけ」と吉元。次は初の優勝と九州大会出場をかけて、強豪・鹿児島実に挑む。

この記事の執筆者: 政 純一郎

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