スピードを求めるなら力をつけよう【セルフコンディションニングお役立ち情報】
速く走るためには力強く地面を押し込み、床反力を得ることが必要不可欠
トレーニング期に入り、筋肉をつけるためにウエイトトレーニングを行っていると、中には筋肉によって体が重くなり、スピードを失ってしまうのでは…と心配する選手がいます。野球をする上で知っておきたい物理の法則に「力×スピード=パワー」があります。大きなパワーを生み出すためにはスピードとともに力(筋力)が必要であること、スピードを高めるためにはスピードを生み出す土台となるボディを強くすることが大切です。
体を車のボディ、筋肉をエンジンにたとえてみましょう。軽自動車で軽自動車用のエンジンを積んでいる状態(体が軽く、主観的にスピードを感じる状態)から、普通自動車のボディとエンジン、さらにはレーシングカーのボディとエンジンへと性能を上げていくと筋力とともにスピードも改善されてより大きなパワーを得ることにつながります。中には「軽自動車のボディにレーシングカーのエンジンを載せるともっと速くなるのでは?」と考える人がいるかもしれませんが、大きなパワーを持つエンジンを搭載するのであれば、それに耐えられるだけのボディが必要であり、ボディが備わっていないと動くたびにその大きなパワーに耐えられず、故障(ケガ)をしやすくなると言えるでしょう。
野球に求められるスピードは走るスピードにとどまらず、スイングスピードや球速、体の切り返しなどさまざまな場面で見られるものです。走るスピードは「ピッチ(回転数)」と「ストライド(歩幅)」を掛け合わせたものですが、筋力が向上することによってピッチが増えたり、ストライドが拡がったりといったことが期待できます。また地面を押し込む力が増えるとそれだけ地面から得られる反力も増えることになり、より大きな力を得て体を動かすことが可能になります。スイングスピードを高める、球速を上げるといったことも大きな地面反力を得てバットやボールに力を伝達するためには、大きく地面を押し込む力が必要となります。
ウエイトトレーニングは垂直方向や左右といった直線的な動きが多いため、それを野球の動作に結びつけるための動きづくり(回旋動作や水平方向の動きなど)をあわせて行うことが必要となりますが、筋肉をつけて体を大きくすることはより力強い動作のために必要な過程であると言えます。スピードを求めるのであれば、筋力を高めることがより近道であることを覚えておきましょう。
文:西村 典子
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