試合レポート

東部vs北部、南部vs西部<埼玉東西南北交流戦>

2023.11.05


2年目の4地区選抜交流試合 変更点は?低反発バットの影響は?

<4地区選抜交流試合:東部4-1北部、南部8-1西部>◇5日・第2日◇県営大宮
監督は東部地区選抜(以下東部)・本多監督(春日部共栄)、西部地区選抜(以下西部)・中野監督(川越西)、南部地区選抜(以下南部)・鈴木監督(市立浦和)、北部地区選抜(以下北部)・田中監督(本庄東)が指揮を執っているが、若い指導者が経験値を積むためにも、サインは別の方が出すチームが多かった。前大会との変更点は監督が直接マウンドへ行けるようになったことと、1試合目と2試合目の間に小学生以下のちびっ子対象の簡単な野球体験イベントを開催することが挙がる。

第1試合は東部vs北部である。
先制したのは北部。東部の2番手・渡邉 勇人(獨協埼玉)を攻め、この回先頭の中沢 啓人(本庄)が四球で出塁すると、続く小山 晴生(松山)がきっちりと送り、1死二塁とする。2死後、5番・上松 武尊(熊谷)が中前適時打を放ち1点を先制する。

対する東部も5回、北部の2番手・小林 恭介(北本)を攻め、この回先頭の小嶋 理久(春日部東)が遊撃手への内野安打を放ち出塁すると、続く伊藤 拓哉(鷲宮)も四球を選び無死一、二塁とする。さらに8番・清村 佑木(越ヶ谷)の犠打が野選となり無死満塁とチャンスを広げる。代打・帖佐 漣音(羽生第一)は併殺に倒れるが、2死後、1番・坂本 佑斗(叡明)のところで暴投により三走・伊藤だけでなく、二走・清村も一気に本塁生還し逆転に成功する。

流れをつかんだ東部は6回にも、この回から登板した北部の3番手・向田 陽生(桶川)の代わり端を攻め、この回先頭の杉浦 涼介(越谷南)が左前安打を放ち出塁すると、続く黒川 伊吹(久喜北陽)の二ゴロで遊撃手の一塁送球が悪送球となり1死二塁とする。さらに5番・髙田 憲志(春日部共栄)が四球を選び1死一、二塁とすると、続く代打・吉田 悠佑(蓮田松韻)が右前安打を放ち1死満塁とチャンスを広げる。ここで小嶋が投手強襲の2点適時打を放ち4対1とする。

投手陣が5回以降、無失点に抑えた東部がそのまま4対1で勝利した。
「初勝利ですよ。相手のミスがあったり運があったね。昨年はぶっつけ本番、今年は大会前に2回集まったのでベンチのムードも良くて。今年は自分で20人選びました。選考からやると結構しんどい。マウンドに行ったのは初めてです。演出っぽくなってしまったが『力んでるよっ』て声をかけた。ここでやるのは面白いから今年からやろうと。ただ、慣れてないからタイミングが難しくて(笑)。慣れてくれば自分で行ったほうが早いのは間違いないんだけど。あとは監督の背番号ですね」(本多監督)と3連敗中であった本多監督にとっては嬉しい初勝利。周りから促された部分もあるが、9回には自らがマウンドへ行き、今回の監督が直接マウンドへ行けるルール適用第1号となった。

一方の北部は田中監督が「まずはケガをさせないことと、全員出場すること。北部のチームらしくまとまりがあって良い雰囲気で終われたので。飯島、中村は頭から使って。昨年の反省を生かして、片野先生が3回の練習中、2回を試合で見極める形を取った」と、昨年同様にきっちりと練習試合などを組み、適性を見極め今大会に臨んだだけあり雰囲気は上々だったようだ。

第2試合は西部vs南部という、前日勝利した地区同士の一戦である。
西部のクリーンアップ、中村 アラシュ(聖望学園)、井出 大馳(市立川越)、江幡 雅海(山村国際)の3人も迫力はあるが、この日の南部は1番・小板橋 望和(立教新座)、2番・月山 隼平(浦和学院)、3番・西澤 剛(川口市立)、4番・山﨑 豪流(細田学園)という強力な布陣で臨む。なお、月山は木製バットを使う。
南部は初回、西部の先発・伊藤 遼佑(星野)の立ち上がりを攻め、先頭の小板橋が遊撃への内野安打で出塁すると、1死後、3番・西澤が中前適時打を放ち1点を先制する。

南部は3回にも、この回から登板した2番手・田畑 蓮(所沢西)の代わり端を攻め、この回先頭の相羽 将吾(与野)が四球で出塁すると、続く立川 大翔(川口工)も四球を選び無死一、二塁とする。ここで1番・小板橋が右前適時打を放ち、まず1点、さらに右翼手がファンブルする間に二塁へと進み無死二、三塁とする。続く月山のところで暴投でこの回2点目、月山も左前適時打を放ち4点差をつける。

西部はたまらず田畑から武山 侑夢(東野)へとスイッチするが、南部は武山の代わり端を攻め、3番・西澤のところでベンチはエンドランを仕掛け、無死一、三塁とする。続く山﨑は併殺に倒れるが、その間に1点を追加するなど、南部は結局この回一挙4点を奪うビッグイニングとし5対0とする。

流れをつかんだ南部は4回にも、この回先頭の高橋 慶悟(大宮南)が遊失で出塁すると、さらに連続暴投で高橋は三塁へと進む。1死後、8番・相羽が四球を選び1死一、三塁とすると、続く立川の内野ゴロの間に1点を追加する。
対する西部の反撃は5回、この回先頭の武石が中越えの三塁打を放ち出塁すると、1死後、2番・大川 竜二(飯能)が左前適時打を放ち1点を返す。

だが、南部は8回にも西部の7番手・大戸 遥貴(坂戸)の代わり端を攻め、この回先頭の月山が中前安打を放ち出塁すると、続く西澤が適時三塁打を放ちまず1点、さらに4番・市川 将暉(大宮工)の内野ゴロの間に1点を追加し、8対1とし試合の大勢は決した。

投げては後藤 翔太(浦和麗明)、梶時 都(市立浦和)、堀部 圭太()、吉田 平良(武南)、大竹 悠太(西武台)と繋ぎ、最後は連投となる冨士 大和(大宮東)が締める。
結局、南部が西部に8対1と圧勝した。

南部の鈴木監督は「うちは大黒柱がいるんで。昨日は西澤が市内大会でいなかったので、今日は1〜4番で強力な布陣にできた。まず1校1人というルールなのでまずは優秀なキャッチャーを選ぼうと。その分、その高校の投手など別の選手が選べなくなりますが。監督がマウンドに行くのは岩井さんを始め、まずは埼玉で発信して周りがどういう反応をするのかを示そうと。でもなかなか慣れない、違和感がある。今大会の意義に関しては特に公立にとっては私立の高校と一緒にできるこのような機会は大きい。部員が足りない高校の子を必ず選んでおり、今回選ばれなかった高校は来年必ず選ぶことになっている」と、素晴らしい結果をかみ締めつつ、あくまで公立高校の監督として今大会の意義を喜んでいた。

一方の西部の中野監督は「1回発足会をやって、1回練習会をやりました。見栄えで負けないように大きい子はメンバーに選ぼうと(笑)」と、敗戦にもサバサバとした印象。もちろん、西川や中村などがチームを引っ張っていたが、中には鶴ヶ島清風・武石のような強豪校ではない高校からも活躍する選手が登場し、本来の今大会の目的を果たしたからであろう。

武石も「自分でいいのかなって思っていたんですが、代打に出してもらって結果を出せてよかった。今日の体験を自分のチームに持ち帰りたい」と手応えをつかんでいた。
2回目の4地区選抜を終え、現在の監督会の会長である熊谷商業・新井監督は「200年構想の裾野を広げようとやっている部分。現状は12月中の開催はできないので、来年はコマーシャルの方法をもう少し考える。本多監督がマウンドに行った場面は、昨年もランナーコーチに指導者が入ったり、少しずつそういう形で野球の置かれている状況も変わってきているんでアンテナを高くしてやっていかなければ」と総括する。革新的な埼玉県として来年以降も新たな施策に期待したい。

そして、最後に今大会埼玉では公式戦で本格的に使用されることとなった注目の低反発バットについてだが、監督、選手から様々な意見が出た。
「低反発の影響は多分にあると思う」(中野監督)
「外野が音に騙されるので慣れるまで時間がかかるかも」(本多監督)
「今後、苦労しそう。このメンバーでも外野の頭を越える打球がほとんどなかった。外野の守備位置も前になっている中でのこの結果はインパクトがあった」(鈴木監督)

「来春から低反発に変わるので、いろいろ試している段階ですが、もしかしたら木のほうが合っているんじゃないかって、今は練習試合は全部、木でやっています」(月山)
「今日も捉えてホームランかと思っても伸びずに捕られた打球があった。今は練習で木を使っている」(河井大悟・川越東)
「飛ばないし打球速度も出ない。チームではみんな木で打っている」(中村)

「以前の金属とは打球の角度や飛距離が違う。外野手の打球判断を誤る場面も見受けられます。より確実に当てないと。ほとんどの選手がミスショットになっている。ただ、うちの選手でも1人だけ華奢なんですが前のバットより飛距離が出る子がいて、その子は元々練習の時から木を使っていた。芯に当たれば前より飛ぶ子もいるので技術次第。今後は芯に当たる確率を上げる練習をする。例えばライナー性の打球を求めるとか。飛ばなくなったから、より筋トレをするというのは違う。今までは誤魔化せていたが、筋力=飛距離ではなくなったということ。あとは投手を育てて内野を守れるようにしたい。バットの変更は指導者に色々なテーマを与えてくれる」(田中監督)

色々な選手や監督に低反発バットについて伺ったが、最後の田中監督のコメントに集約される。このバットをいかに早い段階で使いこなすことができるようになるか、もしくは木製バットに切り替えるのか。この対応が来春以降の甲子園出場に直結するに違いない。来春以降はこのテーマについて注視していきたい。

この記事の執筆者: 南 英博

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5 Comments

  1. 稲垣貴仁(インプレッサ)

    2023-12-01 at 9:58 PM

    春日部共栄の高田憲志、伸びろ❗

    • 大石小学校時代同級生の西方

      2024-01-14 at 5:38 PM

      期待しようね
      稲垣くん、
      今は具合良くないんでしょ
      赤見台に引っ越して10年だね、間もなく
      高木直子先輩も心配していたからね。
      きみは彼女を好きだったでしょ、朝の登校もたまに
      with her ! ! ♡
      君が1年三組の頃、同じ図書委員だったからね
      吹奏楽部、3年六組で高瀬真理枝先生担任
      あとは明用8番1に住まいが、高木先輩
      はい、稲垣くんの眠った横顔、僕はとっても好きだからね ♡^;^♡ from Nishikata

  2. 稲垣真寿美は、夫と2男の実母

    2024-01-14 at 1:49 PM

    どういう選ばれ方をされて地区交流試合が二日に渡り行われたかはわかりませんが、いい試みですね。
    これなら夏の対戦も知った顔ぶれだったりで、やりやすいかと。
    親睦を深めるのは大切、試合中はライバルともその前後は仲間ですからね。

    私の家、やはりあまりお付き合いもなく来てしまっただけに今は寂しい限りです。
    高校野球はそれ以外の人にも何かを与えてくれるのは素晴らしく思えます。
    敵からライバル、いえ戦う友にと変わってきてるのですね。
    我々も親睦を今からも深めます。

    • 田名網潔

      2024-01-14 at 5:29 PM

      そうですね

  3. 稲垣貴仁くん

    2024-01-30 at 9:05 AM

    北川辺中学校出身の広瀬君も好素材だね。兄は凛人(法大1年)

    遊撃手ならまだまだ頑張らないと

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